「誰もが貧困に陥ってしまう、そんな可能性を秘めているこの日本。その環境で育つ子どもたちも、被害者です。」と述べて、急速に高齢化社会に突入するなかで、持家を持たないすべての方に、そして貸す側の家主さんを含め、ひとりでも多くの人に「他人事ではない」ことを感じてもらうために書かれた本があります。
本日紹介するのは、30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚、シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格、家主側の訴訟代理人として延べ2,300件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在で、連載執筆や講演を多数行っている章司法書士事務所代表の太田垣章子さんが書いた、こちらの書籍です。
太田垣章子『家賃滞納という貧困』(ポプラ新書)
この本は、「家賃滞納は普通の人が堕ちる破滅への入り口」で、誰でも明日陥るかも知れないことだと、18の事例を通して伝えてくれる書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.家賃を滞納すると何が起こる?
2.誰もが「紙一重」の家賃滞納
3.そこにあるのは「甘え」なのか
4.家賃滞納の知られざる闇
5.家賃滞納が映し出すシングルマザーの実態
6.夢を持てない若者たち
7.家賃滞納で露呈する法律の不条理
この本の冒頭で著者は、「家賃滞納」をすれば、通常は3カ月以上の滞納により、以下のステップで「強制退去」させられることを解説しています。
◆ 家賃滞納
◆ 電話・手紙による支払いの督促
◆ 連帯保証人への連絡
◆ 3カ月滞納で、内容証明郵便による「条件付解除予告通知書」を送付
◆ 支払がないと、明け渡し訴訟の申し立て
◆ 判決
◆ 任意退去、滞納家賃の支払いがなければ、「強制執行」の申し立て
◆ 催告(期日までの明け渡しの催促)
◆ 強制執行
◆ 強制的に退去させられる
続いて、誰もが「紙一重」の家賃滞納であることが分かる6つの事例が紹介されています。いずれも、中流以上あるいは普通の生活から、ちょっとしたアクシデントやキッカケで家賃滞納が起こったケースです。
1.広告代理店勤務の中流以上の生活が29歳での起業失敗で暗転した夫婦
2.婚約中の里帰り出産中に夫の仕事が上手くいかず滞納した20歳代夫婦
3.ファミレスのシフトが少なく滞納した55歳のシングルマザー
4.派遣社員として転職を繰り返し、仕事が途切れて滞納した就職氷河期世代の41歳独身男性
5.忽然と姿を消して行方不明になった83歳の独居高齢者女性
6.60歳男性に騙されて数百万円を取られ滞納となった82歳の独居女性
さらに、親やパートナーに甘えて家賃滞納となる人、お酒で仕事をなくして滞納へ向かう人、シングルマザーの貧困の実態、親との折り合いが悪かったり、親子ともども貧困が伝染して滞納となる人などの事例が紹介されています。
とくに印象に残る特徴的な事例を以下に挙げておきます。
◆ 昼から酒を飲み仕事ができなくなった71歳の高齢男性
◆ 大手企業に勤務していた33歳の一級建築士
◆ 親子のコミュニケーション不足で滞納に陥った21歳女性や42歳シングルマザー
◆ 働かない父親の滞納の面倒を見る18歳の子ども
◆ 貧困の親に頼れずバイトしながら大学に通うも、滞納に追い込まれた若者
この本の事例を読んでいると、親の貧困が子どもの貧困につながること、ひとり親(とりわけシングルマザー)の貧困問題、高齢者の貧困から家賃滞納につながることは、誰にでも起こり得ると実感します。
また、連帯保証人に代わって、家賃保証会社による保証が一般的になったことが、「身の丈を超える家賃」の負担を招き、滞納の予備軍になっているケースが多いことが分かります。
あなたも本書を読んで、「家賃滞納という貧困」の実態を学び、そのリスクについて考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!