「じつは身体を動かすことほど、脳に影響をおよぼすものはない。これが本書のテーマであり、とりわけ効果の高い身体の動かし方とそのメカニズムをお伝えすることが、この本のねらいだ。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、スウェーデンのストックホルム出身で、カロリンスカ研究所(カロリンスカ医科大学)にて医学を、ストックホルム商科大学にて企業経営を修め、現在は上級医師として病院に勤務する精神科医で、多数の記事の執筆を行い、『スマホ脳』(新潮社)の著者でもあるアンデシュ・ハンセンさんが書いた、こちらの新刊書籍です。
アンデシュ・ハンセン『運動脳』(サンマーク出版)
この本は、運動が脳におよぼす絶大な効果を紹介し、その理由についても説明している書です。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.現代人はほとんど原始人
2.脳から「ストレス」を取り払う
3.「集中力」を取り戻せ!
4.うつ・モチベーションの科学
5.「記憶力」を極限まで高める
6.頭の中から「アイデア」を取り出す
7.「学力」を伸ばす
8.健康脳
9.最も動く祖先が生き残った
10.運動脳マニュアル
この本の冒頭で著者は、「身体を動かすのであればどんなことでも有効であり、その一歩一歩が脳にとって価値がある。いつ、どこで、何をするかは大した問題ではない。」と述べています。
本書の前半では、「現代人はほとんど原始人」および「脳からストレスを取り払う」について説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 原始時代の人々は、現代人よりはるかによく動く
◆ 定期的なウォーキングで「認知機能」が向上
◆ 身体を活発に動かした人の脳は機能が向上し、加齢による悪影響が抑制、脳が若返る
◆ 脳には1000億個の細胞、つながり(脳内連携)の総数は100兆ある
◆ すぐれた脳とは脳細胞の数ではなく、各領域がしっかり連携している脳
◆ 運動を習慣にすれば、脳の可塑性が高まり、「子どもの脳」のように変えられる
◆ 脳は全体重の2%なのに、身体が必要とするエネルギーの20%を消費する
◆ ストレスが発生する「HPAメカニズム」でコルチゾールが分泌
◆「闘争か逃走か」のストレスのブレーキ役が「海馬」
◆ 運動の最中はコルチゾールの分泌量が増え、終わると減るが、定期的に運動すると、コルチゾールは上がりにくくなり、終わると下がる量が増えていく
◆ ストレスで前頭葉も委縮するが、運動によって海馬だけでなく前頭葉も強化される
◆ 週2回以上運動している人は、ストレスや不安とほぼ無縁
この本の中盤では、「集中力を取り戻せ!」「うつ・モチベーションの科学」および「記憶力を極限まで高める」について、次のポイントを解説しています。
◆ 運動によってドーパミンの分泌量が増える
◆ ドーパミンは脳の司令塔である前頭前皮質(目標設定・認知機能)を活性化
◆ 身体を動かせば、集中力を高め、最後までやり抜く
◆ BDNF(脳由来神経栄養因子)は脳の細胞間のつながりを強化し、学習や記憶の力を高める
◆ BDNFの生成に運動ほど効果的なものはない
◆「ランナーズハイ」は実在する(脳内モルヒネ=エンドルフィン)
◆ 運動以上に記憶力を高められるものはない
◆ 持久力系のトレーニングを3か月以上続けると、暗記する能力がかなり上がる
◆ 海馬が身体を動かすことによって最も恩恵を受ける部位
◆ 暗記力を高めたいならランニング
◆ 脳トレや認知トレーニングでは脳の働きはよくならない
◆「日常」より「非日常」を脳は選ぶ
本書の後半では、「頭の中からアイデアを取り出す」「学力を伸ばす」「健康脳」「最も動く祖先が生き残った」および「運動脳マニュアル」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 村上春樹ほか作家、俳優、ミュージシャン、アーティスト、科学者、起業家などプロは創造性を高めるために運動している
◆ 運動は発散的思考、収束的思考のほか、地道に努力するための気力を養う
◆「創造の発信源」は情報のハブになっている「視床」
◆ 運動やトレーニングで、アイデアの質も量も高まる
◆ ヒトの遺伝子(DNAの遺伝情報)の数2万3000個で、脳の1000億個の細胞同士のつながり100兆を支配できない
◆ 脳細胞の100兆ものつながりは、「生活習慣」によって決まる
◆ 子どもでも身体を鍛えれば、海馬が大きくなる(体力が知力を決める)
◆ 毎日たくさん歩いた子はどもは、ストレスを感じにくく精神状態も安定している
◆ 学力を上げるのは「心拍数」
◆ 立って作業をすると脳が効率よく働く
◆ 運動すると、心が落ち着き、ストレスにも強くなり、記憶力や創造性、集中力といった認知機能も高まる(=「知性」)
◆ 18歳時の体力で「学歴」「収入」「病歴」に傾向が出る
◆ 重要な点は、何をして身体を動かすかではなく、とにかく身体を動かすこと
◆ 子どものころから脳細胞のつながりが消えていく「刈り込み」現象は、生涯にわたって影響を及ぼす
◆ 毎日20分歩いてカロリー消費するだけで、「脳の老化」(=加齢による前頭葉の委縮)をストップできる
◆ 健康な頭脳が「健康寿命」を長くする
◆ 意識して歩くと「認知症」発症率が40%減
◆ 歩いたり走ったりすると、脳内では様々な領域が強調しながら活動している
◆ 長寿地域「ブルーゾーン」の日常的な小さな運動
◆ 脳の最も重要な仕事は「移動」
◆ 脳は動くためにできている
◆ 高い効果を望むなら、最低30分のウォーキング
◆ 理想的には、ランニングを週3回、45分以上行う
◆ 根気よく、あきらめず、とにかく続ける、脳が再構築されて構造変化するのは時間がかかる
この本の締めくくりとして著者は、「脳が運動によって強化されるメカニズムはまだ完全には解明されていないが、この先、科学者たちが山ほどの新事実を明らかにしてくれることだろう。」「運動が脳にもたらす恩恵は、私たちの想像をはるかに超えるほど大きい」と述べています。
あなたも本書を読んで、ウォーキングやランニングなど有酸素運動で「心拍数」を上げ、海馬や前頭葉を大きくして、学力・集中力・記憶力・意欲・創造性が高まることを実感してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2889日目】