「長期・分散・積立投資こそが、普通の市民が行うべき投資の王道である」と提唱し、自らの運用実績を公開しながら、運用商品・投資信託(投信)を選ぶ際の基準やその背景にある投資理論を、金融のプロが平易に伝えてくれる本があります。
本日紹介するのは、慶應義塾大学を卒業、米国ペンシルベニア大学経営大学院に留学、日本およびアメリカの金融機関で取締役を歴任、金融庁有識者検討会および日本IR協議会理事会メンバー等を歴任、現在は東証一部上場企業CFO、日本証券アナリスト協会検定委員の北村慶さんが書いた、こちらの書籍です。
北村慶『金融のプロが実はやっている 最もシンプルで賢い投資の結論』(朝日新聞出版)
この本は、著者が過去13年にわたって実践してきた「長期・分散・積立投資」の結果を、実際の数字で説明し、「長期・分散・積立投資」がバブル崩壊にも対処できることを示すとともに、「老後資金2000万円問題」を分析して、「長期・分散・積立投資」がなぜベストの投資方法なのか、具体的にどう始めればよいのかを紹介・解説している書です。
本書は以下の9部構成から成っています。
1.はじめに-「金融リテラシー」で明るい未来を
2.大公開-「長期・分散・積立投資」13年間の投資結果
3.「老後資金2000万円問題」は本当に必要か?
4.活況な市場はコロナ・バブルか?
5.資産運用の科学~「長期・分散・積立投資」はなぜ勝てるのか?
6.資産運用実践編
7.資産運用のニューノーマル(新しい常識)
8.明るい未来のために
9.おわりに-大多数の皆さんにとって最適の投資法
この本の冒頭で著者は、13年前から始めていた「長期・分散・積立投資」において、毎月65,000円、累計約1,000万円を投資し、2021年6月現在の時価が1,500万円超(含み益500万円)で、率にして50%の利益、利回り約6%であることを公開しています。
その間の著者の投資方針は以下の通りです。
◆ 手数料が安く分散投資できる投資信託1銘柄を毎月、同じ金額だけ購入
◆ 月額収入の1割(65,000円)を投資に回す
◆ 三菱UFJ国際投信から「eMAXISバランス(8資産金等型)」を購入
◆ ポイントは、分散投資ができるシンプルな商品性と業界最低水準の運用手数料
続いて本書の前半では、「老後資金2000万円問題」、「コロナ・バブル市況」および「長期・分散・積立投資はなぜ勝てるのか」について考察しています。主なポイントは次の通り。
◆ 2019年6月の金融庁レポートの試算では、夫婦無職世帯の不足額は月5.5万円
◆ 老後のリスクは、平均寿命の延び、退職金の減少、年金支給額の減少リスク
◆ 老後資金への備えは「まとまった資金」や「投資の知識」がなくても可能
◆ アメリカの普通の市民は「長期・分散・積立投資」で金融資産を3倍に増加
◆ トレーディング(投機)に走る若者はQOL(生活の質)を下げる
◆ 長期投資のメリットは、ちょうきのけいざいせいちょうから果実を得ること
◆ 長期投資で複利効果を味方につける
◆ 株式会社の利潤の仕組みを理解する
◆ 分散投資はノーベル賞受賞者の投資理論(MPT)で、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)も採用
◆ 積立投資は「ドルコスト平均法」でいつ始めても大丈夫
この本の中盤では、「資産運用実践編」として、著者の経験も踏まえて以下のポイントを説明しています。
◆ 「長期・分散・積立投資」成功には7つのポイントがある
◆ 1~3は、➀無理のない金額で、②自動引き落としで毎月積立で、③分散・長期で
◆ 4~7は、④中途で分配金を受けず、⑤安い手数料で、⑥税制メリットを活用し、早く投資を始める
◆ つみたてNISAで金融庁に認定された192本の投資信託を選択する
◆ 純資産50億円以上、運用開始後5年以上、運用機関の2/3で資金流入超
◆ 販売手数料ゼロ、運用管理費用(信託報酬率)一定金額以内
◆ 投資の神様・バフェットが奨めるS&P500インデックス投信
◆ 投資パフォーマンスに大きな影響がある手数料
◆ 4資産分散、8資産分散のバランス型投資信託のリスク・リターン
◆ 最強の金融庁長官が生み出した「つみててNISA」
◆ 税制メリットの大きい「iDeCo(個人型確定拠出年金」
◆ バランス型インデックス投信を選ぶ
本書の後半では、「資産運用のニューノーマル(新常識)」および「明るい未来のために」というテーマで著者の見解を披露しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「8資産均等型インデックス投信」の弱点を補強する「コア・サテライト戦略」
◆ 著者の追加投資商品はおよび「全世界株式」のインデックス投信
◆ 金(ゴールド)への投資は、純金上場信託(金ETF=「金の果実」)
◆ 暗号資産はブロックチェーン技術の将来性をを評価
◆ ブロックチェーン技術3類型の決済型・プラットフォーム型・送金型の暗号資産に投資
◆ 暗号通貨への投資は、ビットコイン、イーサリアム、リップルの3種類
◆ ESG投資ブームは、「金儲け」と「地球に優しい」の融合
◆ 運用資産9兆ドル(945兆円)のブラックロック・グループの投資方針
◆ 資産運用の本当の意味は、社会や経済の課題解決への貢献
この本の締めくくりとして著者は、「手数料の安いインデックス投信を利用した長期・分散・積立投資」は、最適な投資法である、と述べています。
私の投資の考え方はこの本で提唱する「長期・分散・積立投資」とほぼ同じです。唯一異なる点は、著者は「8資産均等型インデックス投信」をコア投資と位置付けていますが、私のコア投資は「米国株式S&P500」である点です。
但し、「サテライト投資」として、著者がコアにしている「eMAXISバランス(8資産金等型)」にも投資しています。詳細は拙著『定年ひとり起業』(自由国民社)をご参照ください。
あなたも本書を読んで、金融のプロがやている最もシンプルで賢い「手数料の安いインデックス投信を利用した長期・分散・積立投資」を学び、実践してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2596日目】