「日本イノベーション地図２０１５」と題して、４７都道府県起業率ランキング一覧を掲載した雑誌があります。今日紹介するのは、こちらの雑誌特集です。
『Forbes Japan（フォーブス・ジャパン）２０１５年４月号』（プレジデント社）
この雑誌特集では、まず若手起業率Ｎｏ．１の福岡市の取り組みが紹介されています。いま、北の仙台、南の福岡が「起業支援」で激しく競い合っています。
開業３年以内の若い企業が日本の新規雇用の４割を創出している事実をご存じでしょうか。知恵と情熱が集う「場」をつくった福岡市の挑戦は以下の通りです。
１．３年前に史上最年少３６歳で福岡市長に当選した高島宗一郎さんが２０１２年に「スタートアップ都市宣言」
２．スローガン「福岡をアジアのリーダー都市へ」を掲げる
３．シアトルと福岡の類似点に注目し、「福岡市を日本のシアトルに」を目標に
４．「アジアのシリコンバレー」を目指し、創業に関わる登録免許税の軽減、「スタートアップ資金」の創設
５．天神の中心部にあるTSUTAYA BOOK STORE 内に「福岡市スタートアップカフェ」を設置
とくに５番目の「福岡市スタートアップカフェ」は、開設から３ヶ月で２００名の相談者が来場し、市役所での年間相談件数を一気に抜きました。
スタイリッシュな空間に数十名の来場者が詰めかけ、起業セミナーの講師の声を熱心に聞き入る様子は熱気に溢れています。このスペースの最大の魅力は、起業に関心を持つ市民が気軽に立ち寄れることだと言います。
TSUTAYAにビジネス書を見にきた客がふらりと訪れ、ビジネスアイデアをコンシェルジュに話し、事業化までの動きをワンストップで相談できます。
カフェの中央には「ブレストペーパー」と呼ばれる大きな模造紙を敷いたミーティングテーブルがあります。自由なアイデアを出し合い、事業構想などを練る空間です。そこの天井の梁には次の言葉が刻まれています。
I have not failed. I’ve just found 10,000 ways that won’t work.
（私は失敗などしていない。ただ、１万通りの「うまくいかない方法」を見つけただけだ。）
発明王トーマス・エジソンの有名な言葉です。この場所の魅力は「検索だけでは辿りたうけないカオスとセレンディピティ（＝偶然の出会い）」だと、非常勤コンシェルジュの村上純志さんは語ります。
スタートアップカフェの存在は、お祭り好きな福岡の風土ともマッチしています。福岡からグローバルをめざす起業家を後押しする大切な「場」になっていると言えるでしょう。
本雑誌の特集は、福岡市の取り組み紹介に続いて「４７都道府県起業率ランキング」が掲載されています。ランキングのトップ１０は以下の都道府県です。
１．沖縄県（起業率７．６１％）
２．宮城県（起業率６．１２％）
３．福岡県（起業率５．９１％）
４．埼玉県（起業率５．８４％）
５．千葉県（起業率５．７０％）
６．福島県（起業率５．６９％）
７．愛知県（起業率５．２９％）
８．三重県（起業率５．１９％）
９．熊本県（起業率５．１１％）
１０．山口県（起業率５．０８％）
ちなみに東京都は１４位で起業率４．８１％、大阪府は１３位で４．９９％であり、いずれも起業率５％を割っています。起業率では今の日本は地方が優位と言えるでしょう。
この雑誌の特集でもうひとつ印象的な記事は、冒頭の方に紹介されている「ビジネスに理想的な国ランキング」です。ベスト１０を以下に紹介しておきます。
１．デンマーク（人口５６０万人）
２．香港（人口７１７万人）
３．ニュージーランド（人口４４０万人）
４．アイルランド（人口４６０万人）
５．スウェーデン（人口９６８万人）
６．カナダ（人口３,５４２万人）
７．ノルウェー（人口５１２万人）
８．シンガポール（人口５４０万人）
９．スイス（人口８０４万人）
１０．フィンランド（人口５４３万人）
このランキングは世界１４６の国と地域を対象に、財産権の保証、イノベーションの多寡、税率、テクノロジーの発展具合、汚職の有無、個人的自由、通商の自由、通貨の自由、官僚主義の度合い、投資家の保護、株価実績からなる全１１の分野で評価したものです。
ランキングを見ると、人口５００万人前後の小規模な成長性と自由度の高い国・地域が上位に来ているのが特徴です。とくに北欧とアジア地域が目立ちます。
日本の都道府県起業率ランキングと併せてみると、ある程度の規模で外に開かれた自由な地域や都市が起業家を集め、高い成長力を持っていると言えるでしょう。
皆さんも起業をめざすには、それに相応しい、有利な環境を念頭に置くことが大切かも知れません。
では、今日もハッピーな１日を！
