書評ブログ

『タイパの経済学』

「コスパという概念とタイパの概念は、効用の最大化のために消費の最適解を検討するという点では大きく類似しているが、その目的は大きく異なる。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、大学院博士課程を経てニッセイ基礎研究所に入社、現代消費文化論を専門に「オタクの消費」を主なテーマとし、10年以上にわたってオタクの消費欲求の源泉を研究している廣瀬涼さんが書いた、こちらの書籍です。

 

廣瀬涼『タイパの経済学』(幻冬舎新書)

 

この本は、筆者の専門である消費文化論の視点からタイパとコスパを考察し、それぞれの消費行動を整理することでタイパの本質を探り、皆さんの生活に根付いた当たり前の事象を明文化し、その本質を考察している書です。

 

 

本書は以下の5部構成から成っています。

 

1.タイパの正体

2.「消費」されるコンテンツ

3.Z世代の「欲望」を読み解く

4.タイパ化するマーケット

5.タイパ追求の果てに

 

この本の冒頭で著者は、コスパにおいては「お金がないから安いモノを求める」という行動は合理的だ、一方、タイパにおいて「時間がないから時間のかからないモノを求める」という行動は一見合理的に思えるが、ファスト映画のように本編を観ずに内容を知って満足するという行動に合理性があるとは思えない、と述べています。

 

 

本書の前半では、「タイパの正体ついて、以下のポイントを説明しています。

 

◆ コスパがいい3つのパターン:①安くてなおかつ○○、②安いのになおかつ○○、③○○を提供するのに妥当もしくは安い

◆ コスパは主観、比較によって生まれる

◆ コスパ重視の波(ユニクロ、ダイソー、業務スーパー)

◆ タイパ追求は、コンテンツが鑑賞(芸術)対象から消費(消化)対象に

 

 

この本の中盤では、「消費されるコンテンツ」および「Z世代の欲望を読み解く」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

 

◆ 動画サブスクの圧倒的コンテンツ量

◆ タイパを追求しやすく進化した動画視聴プラットフォーム

◆ イントロを飛ばしてサビだけ聴く、動画はとにかく「短く」

◆ スキマ時間がなくなる

 

◆ コスパの追求で消費されるモノは直接効用=目的達成につながるモノ

◆ タイパの追求で消費されるモノは目的達成のための手段(=手間が省ける)

◆ タイパ追求の背景:①コンテンツ量の増加、②プラットフォームのサービス進化、③コンテンツの短尺傾向、④不景気、⑤スキマ時間の活用、という外部要因

◆ タイパ追求の背景:①消費に失敗したくない、②ノルマとなったコンテンツ消費、③手っ取り早く何者かになりたい、という内部要因

 

◆ 消費者は、コスパとタイパを天秤にかけながら消費することも

◆ タイパには3つの性質:①時間効率

◆ タイパの性質:②消費結果によって、かけた時間が評価される(消費後)

◆ タイパの性質:③手間をかけずに○○の状態になる(消費対象を検討する指標)

 

 

本書の後半では、「タイパ化するマーケット」および「タイパ追求の果てに」について考察しています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ マクドナルド化する社会(合理的な生産と消費)

◆ マクドナルド化:①効率性、②計算可能性、③予測可能性、④統制

◆「やったつもり」になれる市場:①chocoZAP、②flier、③サビカラ

◆「オタ活」に忙しい、推し活もタイパ化

◆ 流動的な消費の「リキッド消費」

 

◆ 消費の中心は「必要不可欠ではない消費」

◆ 消費によって実現できる6つの価値:①生理的、②道具的、③機能的

◆ 消費によって実現できる6つの価値:④関係的、⑤精神的、⑥文化的

◆ 使用価値によって精神的充足につながる自分にと大切な消費

◆ 本人にとって必ずしも必要「じゃないモノ消費」

 

◆ 消費過程すら慈しむことができる「モーメント消費」

◆ SNSで加速するタイパ志向

◆ 生きること自体が、「タイパ」や「コスパ」が悪い

◆ 本当にあなたを満たすのは大事なモノで、「じゃないモノ」ではない

◆ 消費は楽しい、効率性・合理性を重視して消費が簡素化すると「楽しさ」は目減りする

 

この本の締めくくりとして著者は、「本書の執筆において、タイパの定義づけを最優先の課題とし、タイパが追求される目的を消費文化の視点から可能な限り掘り下げた」と述べています。

 

 

あなたも本書を読んで、「とにかく失敗したくない」というZ世代の行動の謎を解くカギを学び、「なぜ異常なまでに時間に囚われるのか?」を考察して、自らの消費を「タイパ」の観点から振り返ってみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3320目】