書評ブログ

『孫正義 事業家の精神』

事業家・孫正義の精神を読者が体得し、自らのうちに取り込むことを目指して書かれた本があります。

 

 

本日紹介するのは、1987年に孫正義初インタビューして以来、30年余りにわたって密着取材を続けている作家井上篤夫さんが書いた、こちらの新刊書籍です。

 

 

井上篤夫『孫正義 事業家の精神』(日経BP社)

 

 

この本は、自らを「事業家」だとする孫正義へのインタビューを通して、「起業家は事を起こし、事業家は事を成す、経営者は事を治める」という違いを明確にし、起業家へのメッセージをまとめている書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.事を成す-起業家と事業家、経営者

 

2.最高の人生

 

3.天才たれ

 

4.自己を鍛える

 

 

5.戦略と構え

 

6.言行一致

 

7.技術進化論

 

8.AIと共に生きる君たちへ

 

 

 

この本の冒頭で著者は、2019年10月18日の孫正義へのインタビューでのやり取りを紹介しています。

 

 

 

その核心は、「起業家」と「事業家」、そして「経営者」の違いです。孫正義によれば、以下のような違いがあります。

 

 

◆ 起業家: 今まで存在しないものを生み出すクレイジー、多くは「事を成す」まで行かない

 

◆ 事業家: ユニコーン(時価総額10億ドル=1,000億円)レベルまで到達する「事を成す」、100万人のユーザーの心をつかむレベル

 

◆ 経営者: 知恵、知識、バランスが必要、事業を継続して治めていくプロフェッショナル

 

 

 

この中で面白い比喩は、起業家の多くは、新しいものを生み出す「馬」だけれども、「翼」がないから飛べない、と述べています。

 

 

 

勝ち抜いた「翼」を持った「馬」だけが飛んで、ユニコーンレベルまで到達するのです。ソフトバンク・ビジョンファンドは、「翼」を持って飛んだユニコーン企業だけに投資し、「事を成して」、ユーザー数で1,000万人、10ビリオン(=1兆円)レベルの企業価値にするもの、ということです。

 

 

 

だから投資金額もレベルが違って、「翼」を持って「虹」を食べるユニコーン企業には、1社あたり1ビリオンドル(=1,000億円)規模の投資が必要、だからビジョンファンドの規模は100ビリオン(=10兆円)になったそうです。軍資金は100ビリオンドル必要だ、ということです。

 

 

 

これまでのベンチャーキャピタルは、ユニコーンを目指している会社に、広く浅く投資していくので、「馬」にやるニンジンは、10ミリオン(=10億円)~20ミリオン(=20億円)でいい。でも、ニンジンではなく、飛んで「虹」を食べる、勝ち抜いた「馬」のユニコーン企業には、1ビリオン(=1,000億円)規模の投資が必要なのです。

 

 

 

孫正義の考えているレベルは、これまでの投資家や事業家とは、まったく発想のスケールが違う、ということでしょう。

 

 

 

そのほか本書には、孫正義の生い立ちや、尊敬する父・孫三憲のこと、事業を拡大する過程で事業家・孫正義が考えてきたことが、実際の言葉と行動を記して描かれています。

 

 

 

またこの本は、広く世界の起業家へ向けたメッセージとして書かれているので、すべて日本語と英語を併記する形で記されています。

 

 

 

この本の後半で著者は、「潮目を読め」という孫正義のメッセージを解説しています。

 

 

 

ソフトバンクグループ40年の歴史の中で、一貫して明確なビジョンを持って取り組んでおり、それは「情報革命」ということ。

 

 

 

情報革命は、10年ごとに波が来ていて、その都度、階段が上がっています。大型コンピューターからパソコン、そしてインターネット、さらにブロードバンドになってスマホの時代。

 

 

 

そして今、最大の波が来ていて、それが「AI革命」だ、と孫正義は言います。

 

 

 

事業では、「時代の流れの先を読む。半歩先、1歩先、3歩先、流れの先を読んで、仕掛けて待つ。」

 

 

 

そして、「沈みゆく産業ではなく、伸びゆく産業に軸足を置く」こと。

 

 

 

「潮目を読め」、潮目を読めば見えてくる、と言います。「迷ったときほど、遠くを身よ」

 

 

 

本書の最後で孫正義は、「AIはすべての産業を再定義する」と言い切っています。

 

 

 

これまで、インターネットによるパラダイムシフトで塗り替えられた産業はたった2つ広告産業小売り産業。これを再定義したのがインターネットだった。

 

 

 

ここまでが「情報革命」の最初のステージ。これからは、AIがもたらすパラダイムシフトの時代で、影響を及ぼす領域インターネットの比ではない。

 

 

 

自動車産業、交通、教育、医療、不動産、金融などあらゆる領域に及ぶ、と孫さんは言います。

 

 

 

過去30年で、CPUに入るトランジスタの数が100万倍、メモリ容量が100万倍、通信速度が300万倍になった。今後30年、進化はさらに進み、AI自身がデータをセンシングし、推論し、結論を出していく。

 

 

 

ソフトバンクグループが買収したアーム社は、コンピュータの頭脳とも言える、モバイルマイクロプロセッサの設計の99%シェアを握っている、と言います。この20年の間に1兆個のチップを出荷する見通しで、「地球上の誰一人として、このチップ無しで生きることはできません」孫正義は述べています。

 

 

 

本書の最後で著者は、孫正義時価総額9兆円のソフトバンクグループが、2040年に時価総額200兆円にしたい、という壮大な構想を述べたことを紹介しています。

 

 

 

あなたも本書を読んで、孫正義が説く「事業家」の発想や時代の潮目を学び、事業に活かしてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!