「いつまでも健康でいられることと、やりたいことができるためのお金があることが必要です。すなわち単なる『寿命』ではなく、『健康寿命』と『資産寿命』が大切なのです。」と提唱している本があります。
本日紹介するのは、大手証券会社で定年まで勤務したのちに独立し、経済コラムニストとして書籍やコラム執筆のかたわら、全国で140回を超える講演活動をしている大江英樹さんが書いた、こちらの書籍です。
大江英樹『資産寿命 人生100年時代の「お金の長寿術」』(朝日新書)
この本は、健康法に「全ての人にあてはまるものはなく、体質や遺伝によって人それぞれ」なのと同様に、資産寿命の延ばし方も「様々に多面的な方法で自分に合ったやり方」を自分で考えることが大切だと説き、そのためにの指南書ではなく「指針の書」として書かれたものです。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.資産寿命という考え方
2.働いて資産寿命を延ばす
3.収支がすべて
4.間違いだらけの年金知識
5.運用で資産寿命を延ばす
6.私たちの「お金の長寿術」-5人の老後のお金と暮らし
この本の冒頭で著者は、「資産を持っていない」という中高年会社員の方に、以下の資産があることが一般的だと述べています。
◆ 公的年金(90歳まで生きるとして6,000万円~7,000万円)
◆ 退職金(中小企業で1,200万円程度)
◆ 人的資産(=人的資本):人がお金を生み出す力(= 稼ぐ力)
老後生活における「お金のやりくり」で理想的な姿は、次の方法だ、と著者は言います。
◆ 日々の生活は公的年金でまかなう
◆ 趣味や楽しみの費用は働いて得た収入やそれを貯めた資金でまかなう
◆ 退職金や自分の保有する金融資産はできるだけ取り崩さず、将来に備える
続いて、資産寿命を延ばすというと、「投資」だけを考える人が多いのですが、その前に考えるポイントとして、以下の3点を挙げています。
1.働いて収入を得るようにする
2.年金の受け取り方を考える
3.支出をきちんと管理する
年金の受け取り方は、➀働く、②公的年金の受け取り開始時期を決める、③企業年金の受け取り方式を決める、という3つのアクションの組み合わせだと本書では説明しています。
次に、会社員がよく誤解する「退職金」の考え方について、気をつけたい4つのポイントを挙げています。
◆ 赤字補填に退職金を使うのは禁物
◆ 退職金運用プランには注意
◆ 退職金を元手にお店をオープン、は要注意
◆ 退職金への過信は禁物
この本の前半では、人的資本(=「稼ぐ力」)について、その方法や金額、とくに「収支」の重要性について解説しています。ポイントは以下の通り。
◆ 貯蓄や退職金は、働くことで「先延ばし」を
◆ IC(インディペンデント・コントラクター=独立業務請負人)として業務委託契約で働く
◆ 定年起業はローリスク・ミドルリターン
◆ 起業とは「自由の翼を手に入れる」こと
◆ 大事なのは収入以上に支出の管理
◆ 自分でライフプランシミュレーションを行う
◆ 上記シミュレーションのポイントは、➀ざっくり試算、②家族も一緒に、③定期的に見直し、の3点
◆ 過剰な保険とローンは人生の支出で最大の無駄
◆「三カク」(=義理・見栄・恥の三つを欠く)を実行する
◆ 老後資金2,000万円不足問題は、毎月の支出26万円の前提が疑問(純貯蓄2,500万円ある世帯の消費支出)
◆ 収入と保有資産に見合った生活をする
本書の後半では、年金の仕組みと資産運用について、著者の大江さんの考え方が記されています。私も共感するポイントは以下の通りです。
◆ 年金は貯蓄ではなく「保険」
◆ 年金は破綻しない
◆ 投資では、➀何のために投資するのか、②投資の本質とは何か、③投資は具体的にどうすればいいか、の3点を考える
◆ 投資で絶対正しい二つの真実は、➀先のことは誰もわからない、②世の中にうまい話はない、の2点
この本の最後には、私たちの「お金の長寿術」と題して、5人の老後のお金と暮らしが紹介されていて参考になります。
本書の提起、とくに「人的資本」(=「稼ぐ力」)や、定年起業についての考え方は、私が一昨年に出版した『定年後不安 人生100年時代の生き方』(大杉潤著・角川新書)での主張と共通するコンセプトが多く、共感しました。
あなたも本書を読んで、人生100年時代の「資産寿命」の延ばし方を考えてみませんか。
2020年5月25日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第105回】人生100年時代に大切な「資産寿命」にて紹介しています。
毎日1冊、ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。
では、今日もハッピーな1日を!