「現代日本人の多くが普通に持っている考え方が、少子化をもたらす大きな要因となっており、それらの意識を考慮に入れないでいることが、日本の少子化対策を失敗に導いているのではないだろうか。」と問題提起している本があります。
本日紹介するのは、1957年生まれ、東京大学文学部卒業、東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学、現在は中央大学文学部教授(専門:家族社会学)の山田昌弘さんが書いた、こちらの書籍です。
山田昌弘『日本の少子化対策はなぜ失敗したのか? 結婚・出産が回避される本当の原因』(光文社新書)
この本は、日本の少子化対策が的外れであった点を指摘し、その背後にある、日本社会を特徴づける様々な制度・意識と、経済状況の変化が少子化をもたらしていることを強調するために書かれた書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.はじめに-「子どもにつらい思いをさせたくない」日本人
2.日本の少子化対策の失敗
3.日本の「少子化対策失敗」の理由
4.少子化対策における「欧米中心主義的発想」の陥穽(かんせい)
5.「リスク回避」と「世間体重視」の日本社会-日本人特有の価値意識をさぐる
6.日本で、有効な少子化対策はできるのか
7.あとがき 「新型コロナウイルス後」の家族
この本の冒頭で著者は、日本の少子化対策は世界で「反面教師」として注目を集めている、と指摘しています。とくに、これから急激な少子高齢化に見舞われる中国、韓国、シンガポールなどアジア諸国から多くの問い合わせが著者に寄せられる、と言います。
まず、日本の少子化対策失敗の経緯ですが、30年前の1990年に、いわゆる「1.57ショック」(1989年の合計特殊出生率が1966年の丙午で多くの女性出産を控えた1.58を下回ったこと)からすぐに対策を打たず、10年間を無策のままに過ごしてしまったため、団塊ジュニアが出産適齢期に入った1990年代後半に有効な対策がなく、結果として「第3次ベビーブーム」が起きなかったことです。
次に、日本の出生数は誰が左右するのかの認識が、政策担当者、学者やその周囲にいる若者女性に薄く、「生の声」を聴けていなかったのではないか、と述べています。
具体的には、「大卒、大都市、大企業社員または正規公務員」という属性の人の思いや声ばかりしか集められず、人数の上では日本人の主流である「非大卒、地方、中小企業勤務、非正規雇用」という若い女性の「生の声」が聞けていない、と指摘しています。
続いて、日本の少子化の直接の原因となった「誤解と過ち」を次の2点を挙げて、説明しています。
1.「未婚化が主因」であることを見逃した過ち
2.結婚や子育ての経済的側面をタブーにしていたという過ち
こうした過ちを犯した背景として、この本では以下の理由を挙げています。
◆「欧米主義的思想」に基づいて少子化対策を進めてきた
◆ 少子化対策に効果を上げ、移民に依存せずに人口を維持してきたスウェーデン、フランス、オランダを参考にした
◆ 欧米は未婚で子どもを産む割合が高く、未婚化は少子化と関係がない
とくに「欧米主義的思想」は以下の4つの特徴があり、日本社会では必ずしも当てはまらないことが大きな理由になっています。
1.子は成人したら親から独立して生活するという慣習
2.仕事は女性の自己実現であるという意識
3.恋愛感情(ロマンチック・ラブ)を重視する意識
4.子育ては成人したら完了という意識
それに対して日本社会では、次の3つの「日本固有の価値意識」があり、欧米主義思想がそのまま当てはまらない、と著者は解説しています。
1.「リスク回避」傾向
2.「世間体重視」
3.子どもへの強い愛着-子どもにつらい思いをさせたくないという強い感情
以上の理由から、日本では欧米のように「チャレンジする」より「リスク回避」、世間体を保とうとして、さらに子育てにかかる経済的負担を満たすまでは結婚を回避する、という傾向が広く見られました。
本書の中盤では、それぞれの項目について、欧米の慣習と日本の慣習との違いを詳しく解説しています。詳細についてはぜひこの本を手に取って確認してください。とても鋭く納得感のある説明です。
この本の最後で著者は、「日本で、有効な少子化対策はできるのか?」と問いかけ、次の2つの方向を提言しています。
1.結婚して子どもを2~3人育てても親並みの生活水準を維持できるという期待を持たせる
2.親並みの生活水準に達することは諦めてもらい、結婚・子育てをする方を優先するようにする
あなたも本書を読んで、「日本の少子化対策はなぜ失敗したのか?」を深く考え、今後の生活を考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2445日目】