皆さんは米国にある「世界最高のリーダー育成機関」と呼ばれているクロトンビルをご存知でしょうか?「世界最強企業」として、その名が挙げられるGE(ゼネラル・エレクトリック)の中で最高の業績を上げた人たちを対象にした選抜教育が行われる研修施設です。
GEは1878年にトーマス・エジソンが創業した世界最大級の複合企業として知られています。また同時に「リーダー輩出企業」としても世界に広く知られている会社です。
そのリーダー育成機関である通称「クロトンビル」は1956年、世界初の企業内大学として、米国ニューヨーク州クロトンビルに設立されました。そこで今日はこちらの本を紹介します。
田口力『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本』(角川書店)
この本は、世界中の経営者からの訪問依頼がひっきりなしに来ているクロトンビルで、世界最高のリーダー育成機関としてどのような研修が行われているのか、実例を交えながら、その考え方やヒントを述べたものです。
著者の田口力さんはGEに入社後、このクロトンビルという組織で、日本における責任者およびアジア太平洋のプログラム・マネジャーとして、同地域の上級経営幹部を教えてきました。
著者の田口さんはGEへ入社する前とGEへ入社後で、次の3つが大きく変化したと言います。
1.スキルセット
2.マインドセット
3.活動範囲
スキルセットというのは、スキルをセットで持つということ。まず、①経済、②業界、③社内、④経営の4分野の「知識」を持たなければなりません。
その上で「技能」すなわち、何かをすることができることです。例えば、エクセルやパワーポイントを駆使して業務を遂行できる力です。「業務遂行能力」と言うこともできるでしょう。
これらの「知識」と「技能」を持っていても、それらを使うためには「意思」がなくては意味がありません。また、「知識」や「技能」を発揮するための機会も必要です。その「意思」をマインドセットと呼びます。マインドセットは「心構え」です。
「スキル」 × 「マインドセット」 = 「結果」
ビジネスで起こっていることは上の式で表わされるように、すべて掛け算です。どこかの要素がゼロになると結果はゼロになってしまいます。ここが足し算や引き算とは違う怖い部分でもあります。
20世紀最高の経営者とたたえられるGEのジャック・ウェルチ前会長が引退した際に多くのインタビューを受けました。その中でもとくに印象的だったやり取りがあります。
メディアからの「ウェルチさん、あなたはなぜ20世紀最高の経営者と言われるようになれたのですか」という質問に対して、ウェルチさんはたった一言、「Self-awareness」(=自己に対する気付き)と答えたのです。
皆さんは自分がどんな「価値観」を持っているか、考えてみたことがありますか?日々、忙しく働いていると、そんなことを考える時間などないのが普通かも知れません。
でも「自分の価値観を知る人は成長が早い」と言われています。私たちは意識的・無意識的に「自分の価値観」に基づいて意思決定をし、行動します。いわば「価値観」という「メガネのレンズ」を通してものごとを認識するわけです。
この「価値観」が人によって異なるので、ある人にとって重要な意味を持つことが、ある人にとっては無意味にもなる。先程の質問は、こうした価値判断をする時の「理由」を意識できているか、自分の意識下に置けているかという問いです。
人は「自分の意識下にある」ことしかコントロールできません。自分の「価値観」を認識せず、物事の判断や行動をしていると、「判断や行動をコントロールできていない」状態になります。
自分の判断や行動の結果が成功であれ失敗であれ、次回に向けての軌道修正ができません。様々な経験をしても、肝心の「理由=価値観」を意識できていないので、そこから教訓が得られません。
ビジネスパーソンとしての成長を促進するのは以下のサイクルです。
1.結果について振り返りを行う
2.教訓を導き出す
3.次の判断や行動に生かす
管理者として部下からの信頼を得られていないと悩むビジネスパーソンたちは、「自分の持っている価値観」と「求められている価値観」が合致しているかどうかを明確に把握する必要があります。
人は皆、自分とは違った「価値観」を持っていることを知る必要があります。転職した人たちが優秀であっても上手くいかないのは、その会社の企業文化や組織の価値観と、自分が大切にしたい個人の価値観が合致しないケースが大半です。
ビジネスパーソンとして成功する人の要因は分析が難しいのですが、失敗する人に共通する要因は明確で、以下の3つだと言います。
1.柔軟性(Flexibility)
2.社会的責任性(Social responsibility)
3.対人関係能力(Interpersonal relationships)
上記の1は変化への対応力・適応力であり、2はチームの一員として協力的であり組織に貢献することです。3は他者とよい人間関係が構築できるかどうか、ということでしょう。
これらが上手く出来るかどうかは全て、自分の「価値観」を知って、他人は異なる「価値観」を持っていることを意識できているかどうかにかかっています。
最後にGEの幹部候補に、研修で繰り返し教えられている言葉を2つ、紹介しておきます。
Perception is everything. (周囲の人がどのようにあなたを認識しているかがすべてである。)
If you stop learning, you have to leave GE. (学ぶことをやめたら、その時、君はGEを去れ。)
世界最高のリーダー育成機関が繰り返し教えていることは、ほんとうに基本的な事柄です。「周囲が自分をどのように見ているのか、ほんとうの自分自身や自分の価値観を知りなさい。」そして、つねに「学び続けなさい。」
2020年5月28日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第108回】世界最高のリーダー育成機関とは?にて紹介しています。
では、今日もハッピーな1日を!