書評ブログ

『成熟社会のビジネスシフト 10年後も会社が続くために』

人口減少に伴う市場の縮小、驚くべきスピードで進む技術革新、多様化する消費者のニーズなど、これからの成熟社会を勝ち抜くビジネスの在り方を提言している本があります。

 

 

本日紹介するのは、東京理科大学大学院工学研究科電気工学専攻 博士前期課程修了、日本テキサス・インスツルメンツ株式会社つくば研究開発センター研究員勤務を経て、法政大学経営大学院イノベーション・マネジメント研究科修士課程修了し、現在は、株式会社ロードフロンティア代表取締役並木将央さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

並木将央『成熟社会のビジネスシフト 10年後も会社が続くために』(総合法定出版)

 

 

この本は、人口減少をきっかけに社会が「成長」から「成熟」へと大きく切り替わっている中で、過去から現在までの変化、これからの未来社会の予測を一連の流れとして俯瞰した書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.すでに過ぎた転換点

 

2.イノベーションが生まれる場所

 

3.成熟社会型ビジネスモデル

 

4.マーテティングの常識が変わる

 

 

5.企業・顧客・社員の新しい関係性

 

6.リーダー・マネージャー

 

7.財務・予算の目的は

 

8.すべての歯車をかみ合わせるために

 

 

 

この本の冒頭で著者は、「日本経済の最大の転換期は、鎌倉幕府の時代からずっと右肩上がりに増加を続けてきた人口が、2008年をピークに減少を始めた時ときだ」と述べています。

 

 

人口減少が大きく経済を変えるのです。それを一目で感覚的にわかるようにしたのが、本書19ページに掲載されている「日本の人口推移と将来予測」のグラフです。

 

 

このグラフを見ると、日本経済がなぜ「失われた30年」と言われるほど低迷しているのか、デフレがなぜ解消しないのか、また「成熟社会」とは何なのかが、実感として分かります。

 

 

 

では、なぜ日本の人口は大きく減少し始めたのかについて、本書では以下の要因を指摘しています。

 

 

◆ みんなが大学進学を目指すことで、子どもを育てるコストが格段に上がっている(最低、ひとり2000万円)

 

◆ 男女雇用機会均等法で女性の社会進出が進み、結婚・出産・子育てという過程中心の女性の生活が変わってきた

 

◆ 家族の人口が減り、人口が急激に減り始めた

 

 

 

以上の背景から、大量消費を前提としない世の中になり、「誰も困っていない」「誰もがそこそこ満足」という成熟社会になり、さらにインターネットなど情報の外部化(個人の持つ情報や知識に偏り)によって一人ひとりの価値観が多様化してきたのです。

 

 

 

次に、イノベーションの3つの条件を以下の通り挙げています。

 

 

◆ 共感を得ること

 

◆ ビジネスとしてキャッシュフローが回っていること

 

◆ イノベーションを実現できるための技術が十分に備わっていること

 

 

 

そして消費者自体が「自分が何を欲しているのか」、自分の中に答えを持っていないため、ウォンツを消費者と一緒に作り出していく、という姿勢が大切なのです。

 

 

 

ビジネスとは「価値を提供して、その対価を得る」ものですが、その核心は「“誰” の “何” を “どうやって”」ということです。これを専門用語で「ドメイン(=事業領域)」と言います。

 

 

 

成熟社会では、消費者一人ひとりの価値観が急速に変化して、価値が価値でなくなってしまいビジネスが立ちいかなくなってしまいます。

 

 

 

そこで、ドメイン「優位性・差別性」を加えた「ビジネスコンセプト」を考え出し、それをどう実現していくのかが「ビジネスモデル」なのです。

 

 

 

ビジネスモデルの要素は、次の3つになります。

 

 

1.価値を作る仕組み(人材&内部プロセス)

 

2.資金(財務)

 

3.価値を伝えて売り込まなくても売れる仕組み(マーケティング)

 

 

 

このほか「成熟社会」におけるビジネスとして、成長社会とは異なる重要なポイントを本書では数多く挙げて説明していますが、私がとくに共感し、実践しているものは以下の通りです。

 

 

◆ 相手と共感し、お互いを必要とするビジョンを持った「幸福なアライアンス」

 

◆ モジューラシンキングで、組み合わせによる新たなビジネスを創出

 

◆「いかに自分を幸せにするか」というマーケティング4.0を軸に「共感」を重視する

 

◆ LTV(顧客生涯価値)やマインドシェア(記憶・情報の中で占める割合)を高める

 

 

 

◆ 企業が大事にすべきは顧客より社員

 

◆ 社員が企業価値を高める、共感・マインドシェア・ブランディング・顧客ロイヤリティが大切

 

◆ ビジョン経営が会社を強くする(社員の世界観を統一する)

 

◆ 進捗管理より感情管理(モチベーションの高い社員に進捗管理は不要) 

 

 

 

◆ これからの働き方は、「いろいろなキャリアを重ねる」「仕事が趣味化する」

 

◆ マインドマニュアルが最も大切、「部下の幸せを願うこと」が管理職の唯一の役割

 

◆ 部下の能力発揮と感情管理がマネジメントの基本

 

◆ 自分を知り、相手を知る

 

 

 

この本の後半では、リーダーシップやマネジメントのスタイル、財務・予算の目的について解説されています。詳細を知りたい方はぜひ、本書を手に取ってお読みください。

 

 

 

最後に著者は、相反する思考法として、次の3つの思考法を統合することを提唱しています。

 

 

◆ 二律背反

 

◆ 万物流転

 

◆ 矛盾統合

 

 

 

上記の思考法を活用して、ビジネスを考える順番(ビジネスメイキングの手順)を、著者は以下の13項目で整理しています。

 

 

1.ビジョンを確認する

 

2.現状のビジネスコンセプト・ドメインの確認

 

3.ユーザー観察、潜在的ニーズの発見

 

4.共感を得られるプロトタイプの作成

 

5.ビジネスコンセプト・ドメインの再定義

 

 

 

6.環境分析(外部・内部)

 

7.ビジネスモデルの再構築

 

8.目標設定と戦略の確立

 

9.ビジネスモデルの仕組みを作り上げる

 

 

 

10.マーケティング

 

11.財務管理の決定

 

12.内部プロセスの改善

 

13.人材育成の仕組みを構築

 

 

 

成熟社会とは、個人個人が持つ経験や感性が価値を持つ時代で、生きる活動こそが感謝の交換であり、活力を持って生きて、人が幸せになるためにこそ、会社は必要なのです。

 

 

つまり、成熟社会では、企業は共創をベースにみんなの幸せのために存在するようになる、と著者は述べています。

 

 

 

あなたも本書を読んで、成熟社会における「ビジネスシフト」を考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!