「一人に戻って残りの人生を自由に暮らしたい」――そんな思いから、突然離婚を切り出される現実が、今の日本で静かに、しかし確実に広がっています。
本日紹介するのは、朝日新聞の政治部・社会部・文化部などを横断し、現代日本の “夫婦のかたち” を徹底取材してきた取材班がまとめた渾身のルポルタージュです。
朝日新聞取材班『ルポ 熟年離婚』(朝日新書)
本書は、昭和から平成、令和へと移り変わるなかで増加し続ける「熟年離婚」という現象を、40の事例とともに丹念に描き出した一冊です。婚姻期間20年以上の離婚件数が年間4万件近くに達し、離婚率23.5%という統計を背景に、「退職金」「年金分割」「定年前後の夫婦関係」といった切実なテーマを掘り下げています。
本書は以下の8部構成から成っています。
1.熟年離婚は「クリティカル」なテーマ
2.きっかけは「役職定年」
3.定年クライシス
4.フキハラ
5.ふたりのかたち
6.「卒婚」という選択
7.「仁義なき」熟年離婚
8.熟年婚活が大盛況
この本の冒頭で著者は、人生100年時代の到来によって「定年後に夫婦で過ごす時間がかつてなく長くなり、その分、摩擦や葛藤も増える」と警鐘を鳴らしています。1950年には約60歳だった男性の平均寿命は、いまや81歳。長寿社会が進む中で、「熟年離婚」はまさに避けられない社会問題だと指摘するのです。
本書の前半では、「熟年離婚は『クリティカル』なテーマ」、「きっかけは『役職定年』」および「定年クライシス」について、以下のポイントが強調されています。
◆「熟年離婚」が“隠れた大ヒットコンテンツ”になった背景
◆結婚生活20年以上の離婚率が過去最高を更新し続けている現実
◆「役職定年」が妻の離婚準備を加速させる直接のきっかけとなる
◆「定年クライシス」として、夫婦の時間の激増が新たなストレスを生む構造
◆「俺の飯は?」発言に象徴される、定年後の夫婦不和の典型事例
この本の中盤では、「フキハラ」、「ふたりのかたち」および「『卒婚』という選択」について、エピソードが紹介されています。取り上げられる主な論点は次の通り。
◆「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」が熟年離婚の重大な要因として顕在化
◆30年仕えた末に「本当に大っ嫌い」と叫んだ妻たちの声が示す“限界”のライン
◆「ふたりのかたち」を模索しながらも、生活習慣や価値観のズレが埋まらない現実
◆「卒婚」という“別のかたちの夫婦関係”を選ぶ生き方の条件とリスク
◆「ため息」「不機嫌」がもたらす、夫側の孤立と世間体の問題の連鎖
本書の後半では、「『仁義なき』熟年離婚」および「熟年婚活が大盛況」について、さらに生々しい現実が描かれます。主なポイントは以下の通りです。
◆慰謝料・財産分与・年金分割をめぐる「仁義なき攻防」の実際
◆給与差し押さえや家の持分をめぐる法的トラブルと、専門家が示す実務的アドバイス
◆夫を介護するのも同じ墓に入るのも拒む、超高齢期の離婚事例の増加
◆「熟年婚活」の現場で、再婚や新たなパートナーを求める動きのリアル
◆「あの男の妻として死にたくない」と切実に語る女性たちの決断と背景
また、この本の巻末には、「キーワードで知る熟年離婚」が掲載されていて、参考になり、理解が深まります。
本書の締めくくりとして著者は、人生の幸福度を探る研究を長年、続けている米国ハーバード大学のロバート・ウォールディンガー教授にインタビューした際に語られた「人生の最大の変化は、定年の前後に訪れる。ライフステージの中で人間関係の問題たくさん生じる時期」という言葉を紹介しています。
さらに同教授は、人生の後半を幸せに過ごすためのヒントは、「人生を鳥の目で見つめること」としています。
あなたも本書を読んで、「人生100年時代」の正念場となる人生後半の幸せについて考えるヒントを得てみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3833日目】