書評ブログ

『老人支配国家日本の危機』

「日本はコロナによる死亡率を最小限に抑えましたが、社会が存続する上で『高齢者の死亡率』よりも『出生率』であることを忘れてはいけません」と指摘し、世界の大きな潮流日本の危機について論じている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1951年生まれ、フランスの歴史人口学者、家族人類学者で、トランプ勝利、英国EU離脱などを次々に予言してきたエマニュエル・トッドさんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

エマニュエル・トッド『老人支配国家日本の危機』(文春新書)

 

 

この本は、日本の核武装を説くと同時に、自国防衛以上の危機として、「直系家族病」としても少子化が自国の存亡に直結する問題であることを指摘している書です。

 

 

本書は以下の12部構成から成っています。

 

1.日本の読者へ 同盟は不可欠でも「米国の危うさ」に注意せよ

2.コロナで犠牲になったのは誰か

3.日本は核を持つべきだ

4.「日本人になりたい外国人」は受け入れよ

5.トランプ以後の世界史を語ろう

6.それでも米国が世界史をリードする

 

7.それでも私はトランプ再選を望んでいた

8.それでもトランプは歴史的大統領だった

9.ユーロが欧州のデモクラシーを破壊する

10.トッドが読む、ピケティ『21世紀の資本』

11.「直系家族病」としての少子化

12.トッドが語る、日本の天皇・女性・歴史

 

 

この本の冒頭で著者は、「ここ30~40年にわたる新自由主義の時代は、英米-サッチャーとレーガン-によって始められましたが、新自由主義からの転換もまた英米によって主導されている」と述べています。

 

 

さらに、「17世紀末以降、世界史にリズムを与え、これを牽引してきたのはアングロサクソンの英米で、この構図は今後も大きく変わらないでしょう。」と著者は言い、フランス人であるにもかかわらず、「個人的にもフランスの哲学や観念論より、英米の経験主義に敬意と共感を抱いている」そうです。

 

 

本書の前半では、「老人支配と日本の危機」について、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 今回のコロナ禍は「GDP絶対視」から脱却する好機

◆ グローバル化の深度と死亡率の相関関係(グローバル化で医療・医薬品もマスクもない)

◆ 全人口にロックダウンを強制して、低リスクの若者と現役世代に犠牲を強いる

◆ 社会の活力=出生力

 

◆ 反トランプでも「イラン核合意破棄」を支持

◆ アメリカの「核の傘」は存在しない

◆ 核の不均衡が不安定化を招く

◆ 中国は砂でできた巨人(少子化・高齢化・出生児の男女比不均衡)

 

◆「完璧さ」は日本の長所であり短所

◆「移民受け入れ」と「少子化対策」は二者択一の問題ではない

◆ 移民では「多文化主義」より寛容な「同化主義」を

◆ 自信を持つべき日本人

 

 

この本の中盤では、「アングロサクソンのダイナミクス」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 米国白人(45~54歳)の死亡率が上昇(1999年~2013年)

◆ グローバリゼーション・ファティーグ(グローバル化疲労)

◆ 人種差別とセットの米国のデモクラシー

◆ ユーロは「自由経済的」ではなく「ソビエト的」

 

◆ 英米は資本主義をうまく機能させる「創造的破壊」が得意

◆ 英語圏の大幅な人口増加

◆ トランプの保護主義への転換は、民主主義の「失地回復」をもたらす革命に

◆ 民主主義には発生時から自民族中心主義的な側面が埋め込まれている

 

◆ 高学歴エリートが低学歴労働者を見下す米国の分断(エリート主義vs.ポピュリズム)

◆「高学歴エリート層の黒人」と「中間層・下層の黒人」の階層化

◆「反(アンチ)でしか自己表現できない米民主党

◆ 争点が「経済」から「人種」に

 

 

本書の後半では、「『ドイツ帝国』と化したEU」について解説しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ ユーロで独り勝ちしたドイツ

◆「産業」や「雇用」より「単一通貨」を死守

◆ 英語圏 vs.「ドイツ帝国」としてのEU

◆ 英国のEU離脱やカタルーニャの分離独立の動きで「ヨーロッパ」の死へ

 

◆ 資本の集中化、所得格差の歴史と理論を示した『21世紀の資本』

◆ 戦争が中間層を出現させた

◆ 資本の政治的な力が強まる米国、ヨーロッパ

◆ 世襲による財産移譲を好まないアングロサクソン社会

 

 

この本の巻末では、「家族という日本の病」というテーマにて、著者と磯田道史氏および本郷和人氏との対談が掲載されています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ イトコ婚は社会の閉鎖性の指標

◆ 変革が苦手な直系家族

◆ 性愛におおらかだった「万葉集文化」

◆ 日本の最大の問題は人口減少と少子化

 

◆ 核家族が最も「原始的」

◆ 日本は「極東」ではなく「極西」

◆ 直系家族と軍事組織には深い関係

◆ 家族システムの推移は、核家族⇒直系家族⇒共同体家族で、新しい家族システムは大陸中央から周縁へ

 

 

あなたも本書を読んで、老人支配国家・日本の本当の危機を認識し、「日本型家族」人口減少・少子化の問題を考えてみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2633日目】