書評ブログ

『老後に住める家がない! 明日は我が身の ” 漂流老人” 問題』

「残念ながら今日現在、高齢者は部屋が借りにくいという事実があります。つまり現状では、『持ち家 vs 賃貸』という対比は成り立ちません。」と述べて、60歳代からの「住活」を提唱している本があります。

 

 

本日紹介するのは、30歳で、専業主婦から乳飲み子を抱えて離婚、シングルマザーとして6年にわたる極貧生活を経て、働きながら司法書士試験に合格家主側の訴訟代理人として延べ2,300件以上の家賃滞納者の明け渡し訴訟手続きを受託してきた賃貸トラブル解決のパイオニア的存在で、連載執筆講演を多数行っている章司法書士事務所代表太田垣章子さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

太田垣章子『老後に住める家がない! 明日は我が身の ” 漂流老人” 問題』(ポプラ新書)

 

 

この本は、「本当に高齢者は賃貸物件を借りられないのでしょうか」と問いかけ、実は家主も管理会社も、高齢者によるさまざまなトラブルを回避したいため、70歳代以上の高齢者が借りることは非常に難しい、ということを現場の事例を数多く紹介しながら、そのためにどのような社会制度への改革が必要かを提言している書です。

 

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

 

1.資産を持つ元エリートビジネスマンが賃貸に住めなかった理由

 

2.だから借りられない!不動産現場のリアルな実態

 

3.高齢者が賃貸住宅に住めないリアルな実態

 

4.対談1 熊切伸英(ベルデホーム統括部長)

 

5.お金にまつわる高齢者の賃貸トラブル

 

6.対談2 菅井敏之(元メガバンク支店長)

 

7.今すぐ始めたい、「一生賃貸」のための「住活」

 

 

 

この本の冒頭で著者は、具体的に高齢者が賃貸物件に入居すると、現場では以下のようなトラブルが発生すると述べています。

 

 

◆ 高齢者の認知症が進み、実質面倒を見なければならない

 

◆ 家族が対応しない(言っても来てくれない)

 

◆ 共有部分で失禁・糞尿する(制御できない)

 

◆ 電球を替えられない、テレビが映らなくなった(ただのコンセント抜け)で呼び出される

 

◆ エアコンのリモコンが反応しない(ただの電池切れ)で呼び出される

 

 

 

◆ 大きな音でテレビをつける(耳が遠い)ため、他の入居者とトラブルになる

 

◆ 室内が汚部屋になる(片付けられなくなる)

 

◆ 隣人に金の無心をしたり、被害妄想で留守中に誰かが入室したと近隣や警察に迷惑をかける

 

◆ 小火程度だが火事を引き起こした

 

◆ 隣人との生活スタイルの違いから、生活音トラブルになる

 

 

 

これらのトラブルに加えて、何と言っても「孤独死がやっぱり怖い」と著者は言います。

 

 

 

また「賃借権」は財産であるため、相続の対象になり、賃貸借契約の契約期間中に賃借人がなくなった場合には、家主は相続人全員と契約を解約するか、全相続人が相続放棄をしない限り、賃貸借契約を終わらせることができません。

 

 

 

家主や管理会社が「相続された時の煩雑さ」を理由に高齢者を拒むという現実がある以上、終身建物賃貸借契約を認めるべきだ、と著者は提唱しています。

 

 

 

実際の「孤独死と事故物件」など、賃貸物件の現場でのリアルな実態が本書では詳細に紹介されています。興味ある方はぜひ、この本を手に取ってお読みください。

 

 

 

さらに、熊切伸英(ベルデホーム統括部長)さんおよび菅井敏之(元メガバンク支店長)さんとの対談を通して、不動産管理会社の現場がどう考えているかや、「一生賃貸」で生きるためのお金の知恵について紹介しています。

 

 

 

以上の現場での実態を踏まえて、本書では60歳代での「住活」を以下の通り、推奨しています。

 

 

◆ 60歳代後半までには、自分の荷物や財産などをきちんと整理して、「一生払える家賃の終の棲家」を見つけて引っ越しておく

 

◆ 自分の寿命より耐用年数が長そうな物件を選ぶ

 

◆ 毎月の収入(家賃の4倍以上)や預貯金(家賃の100倍)がある人は、UR賃貸住宅という選択肢もある

 

◆ 必要な荷物を整理、断捨離をして、より狭いスペースの住宅への転居を準備

 

 

 

◆ 低賞感微(低姿勢・賞賛・感謝・微笑)の姿勢が必要

 

◆ 人生の五大経費(教育費・車費用・住宅費・保険料・通信費)の見直しが重要

 

◆ 立地にこだわらず、地方や郊外に賃貸より「持ち家」を

 

◆ 20歳から50歳までの人生は「パック旅行」だが、50歳以降の人生は「自由旅行」(=個人旅行)として自分でデザイン

 

 

 

また、超高齢社会に対応して、次のような社会制度への転換が必要だと著者は提言していて、共感します。

 

 

◆ 生活保護までいかない「家賃補助」という制度

 

◆ 家賃滞納で立ち退きの強制執行の受け皿となる公的シェルター住宅の整備

 

◆ 見守りサービスに代替できるコストの安い「電球」の導入

 

◆ 賃貸借契約を選択制(➀相続されない終身賃貸借、②同居人のみ相続の賃貸借、③従来通り相続される賃貸借)に多様化

 

 

 

この本を読むと、60歳代の体力、気力のある時期に、人生100年時代を展望した「住活」をしておくことが、極めて重要だということがよく分かります。

 

 

 

あなたも本書を読んで、自分のライフプランに合った「終の棲家」を得る「住活」を初めてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!