書評ブログ

『老後ひとり難民』

「身寄りのない高齢者の老後や最期には、解決の難しい問題が山積しています。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、東京大学文学部行動文化学科心理学専攻卒業、東京大学大学院医学系研究科健康科学・看護学専攻博士課程単位取得済み退学、国立精神・神経センター武蔵病院リサーチレジデント医療経済研究機構研究部研究院を経て、現在は株式会社日本総合研究所 創発戦略センター シニアスペシャリスト沢村香苗さんが書いた、こちらの書籍です。

 

沢村香苗『老後ひとり難民』(幻冬舎新書)

 

この本は、今後も「老後ひとり難民」が増えることが確実視される今、できることは何かを考え、まずはこの問題の現状を知り、危機感を共有するために書かれた本です。

 

本書は以下の5部構成から成っています。

1.高齢者を支える制度は、何を見落としてきたのか

2.公的制度からこぼれおちる「老後ひとり難民」たち

3.「老後ひとり難民」が ”死んだあと” に起きること

4.民間サービスは「老後ひとり難民」問題を解決するのか

5.「老後ひとり難民」リスクの高い人がすべきこと

 

この本の冒頭で著者は、「親族に看取ってもらえないどころか、死後の葬儀さえしてもらえないというケースは、今やまったくめずらしくなくなっています。」と述べています。

 

本書の前半では、「高齢者を支える制度は、何を見落としてきたのかついて以下のポイントを説明しています。

◆ 2000年の介護保険制度導入まで「介護」の概念は一般的ではなかった

◆ 保険料を払っているのに介護保険を使いたくないという人たち

◆ 介護保険で受けられる給付:①居宅サービス、②地域密着型サービス、③施設サービス、④介護予防サービス

◆「地域包括センター」と「ケアマネジャー」が二大重要キーワード

 

◆ 地域包括センターは、全国5431か所あり、介護が必要になった時の相談窓口

◆ ケアマネジャーは、ケアプラン(介護サービス計画)作成やサービス利用の調整をする

◆ 介護保険は「面倒を見られる家族がいること」を前提に作られた制度

◆ 介護保険対象外のお金の管理、公共料金支払い、日常生活の各種サポートも重要

 

この本の中盤では、「公的制度からこぼれおちる老後ひとり難民たちおよび「老後ひとり難民が ”死んだあと” に起きること」について解説しています。主なポイントは次の通りです。

◆ 普通に暮らす高齢者がある日、突然「老後ひとり難民」になる

◆ 認知症は隠す独居高齢者が多く、発見されにくい

◆「日常生活自立支援制度」は利用できる人が少ない

◆ 生活保護受給者の55%は65歳以上、申請のキーパーソンはケースワーカー

 

◆「老後ひとり難民」の本当のリスクは、食料品の買い物、ゴミ出し、掃除・洗濯など日常生活の質低下

◆「介護や看病の際に頼れる人」がいない独居男性は6割に上る

◆ 身元保証人がいないと、病院入院や施設入居ができないという重大問題

◆ 高齢者が入居しやすい「居住サポート住宅」の認定制度が創設、終身建物賃貸借契約も

 

◆ 老後のさまざまな場面で、寄り添い、支えてくれる人の存在が不可欠

◆ 医療や介護に関する意思決定、亡くなる時、亡くなった後の死後事務

◆ 入院すると一気に問題が発生(金銭管理、各種支払い、日用品購入など)

◆ 深刻な状況をギリギリで支えている医療ソーシャルワーカー(MSW)

◆ 終末期医療の方針、葬儀方法、残さん分配を意思表示するエンディングノート

 

◆ 死んだ後の病院や介護施設の費用精算、遺体引き取り、火葬と埋蔵、各種支払いの停止

◆ 死亡届の提出義務者がいないケースの増加(身寄りのない持ち家独居)

◆ 死んでも銀行口座からの引き落としは続く

◆「遺贈」は本人の意思で寄附を決めたのかどうかの確認が難しいという問題

 

本書の後半では、「民間サービスは老後ひとり難民問題を解決するのかおよび「老後ひとり難民リスクの高い人がすべきこと」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。

◆「身元保証等高齢者サポート事業」には監督官庁がなく、許認可や届け出も不要

◆「高齢者等終身サポート事業者」のガイドラインが発表

◆ 身元保証等高齢者サポート事業:①身元保証サービス、②日常生活支援サービス、③死後事務サービス

◆ 民間事業者の8割は従業員10人未満、継続年数5年以下が半数

 

◆ 民間サービスの課題:①契約が長期にわたる、②契約時と履行時とタイムラグ、③サービスに対する認識のギャップ

◆ 民間サービス事業者との契約ポイント:①契約時の説明、②預託金、③解約方法、④サービス提供、⑤事業者の体制

◆ ガイドラインはあるが、罰則がないという問題

◆ 1社にすべてを任せるのではなく、リスクを分散する

 

◆ 終活8分野:①掃除・買い物・食事用意など日常生活、②入院時の保証人・意思の説明同席・付き添い、③入院費・家賃その他の支払い、④介護保険手続き、⑤延命治療方針、⑥葬儀や墓の手配、⑦ペットの世話、⑧財産の配分や家財の処分

◆ 終活の3大ポイント:①自分に関する情報の整理、②契約・依頼を明確にする、③自分がいなくても情報が伝わるようにする

◆ アドバンス・ケア・プランニング(ACP=人生会議)に取り組む

◆ 近くにいる ”つながり” を増やす、「老後ひとり難民」同氏の ”つながり”、終活サポートをする自治体の情報収集

 

この本の締めくくりとして著者は、夫婦ふたり暮らしでも、どちらかが倒れれば誰でも「老後ひとり難民」になってしまう、と述べています。

 

あなたも本書を読んで、「老後ひとり難民」になるリスクを認識して、対策の行動を始めていきませんか。

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3485日目】