ニュースはネットで読む時代になった現代において、「ポスト真実の時代にニュースを正しく読むためには、固有のリテラシーが必要だ。」と説いている本があります。
本日紹介するのは、日本経済新聞社の記者を15年務めた後に独立し、株式会社報道イノベーション研究所を設立した松林薫さんが書いた、こちらの書籍です。
松林薫『「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方』(晶文社)
この本は、紙の新聞、テレビ・ラジオ、およびネットによるニュースのついて、それぞれのメディアの特徴を理解し、使い分け、ネット情報を正確に読み解くためのノウハウを、日経新聞の記者を務めてきた著者が、その経験知を基に解説した書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.ネットで変わったジャーナリズム
2.ネット情報を利用する前に
3.ネット情報の利用術
4.高度な読み方、活用法
5.メディアのこれから
本書の冒頭で著者は、インターネットの登場は、ジャーナリズムの世界にも大きなインパクトを与えた、と述べています。
その変化は、「一方通行から双方向へ」の変化であり、ジャーナリズム論も「供給者側の問題」から、「市民がすべてジャーナリストの時代」になったという変化だ、ということです。
そして、本書では次の18のテーマについて、著者の経験知をもとに考察が記されています。
1.ジャーナリズムの本質的な変化
2.ネットの信頼性をめぐる問題
3.メディアが提供する7つの価値
4.メディアと世論
5.「ワンストップ」の落とし穴
6.活字離れは本当か
7.ネットは訂正を前提としたメディア
8.報道の限界を知る
9.メディアを生態系として捉える
10.裏を取る
11.「裏」情報の罠
12.教材としての「紙媒体」
13.ネットにない情報の重要性
14.「たとえ話」で考える-ネットは自分の頭脳じゃない
15.スタンスを決めてネット情報を読む
16.インターネットと議論
17.「報じる側」と「報じられる側」を体験する
18.「紙からネットへ」という変化の本質
この本の冒頭で著者は、フェイスブックに新聞などのニュースが転載されており、米国では44%がフェイスブック経由でニュースを読んでいると紹介しています。
日本でも状況は同様で、DeNAが運営するキュレーションメディアで、医療・健康サイト「WELQ」に掲載された記事が、他のサイトの内容を盗用したものだったり、科学的な根拠に基づかないものが多数紛れ込んでいたりして、大きな社会問題になりました。
このサイトが、人の生命に関わる健康情報を扱っていたことや、運営主体がよく知られた大企業だったことから、WELQへの批判は一気に高まり、DeNAは他のサイトも含め、すべてのまとめサイトを閉鎖することになったのです。
次に本書では、メディアが提供する「7つの価値」を以下の通り、提示しています。
1.娯楽・暇つぶしの提供
2.共通の話題の提供
3.意思決定に必要な情報の提供
4.多様な意見の紹介・議論の場の提供
5.アジェンダセッティング(議題設定)
6.教養・学習・実用情報の提供
7.歴史の記録
また、この本の中盤では、「活字離れ」やネット情報利用に関する留意点も解説しています。かつて、「活字」は、「手書き」に対する言葉で、情報発信者が限定され、信頼性を持つものでしたが、今はブログの登場などで、個人が「活字」による発信をして、見た目に区別がなくなった、と著者は指摘しています。
また、ネット情報は「訂正を前提としたメディア」で、書いた記事が1時間後にはアップされるし、未完成でもリリースする文化になっています。
新聞や書籍などは、一度発信してしまうと情報は固定され、訂正には大きな手間と多額の費用がかかるのと比較すると、ネット情報は修正が容易かつコストがかからないのと対照的です。
新聞記者としての経験から、著者は「ネット情報の裏を取る」には、次の資料ならば概ね正確で信頼できると述べています。
◆ 役所や公的機関の作成した文書
◆ 金融機関や大手シンクタンクの作成した資料
◆ 一般紙の新聞記事
◆ 学術書や学術論文
◆ 版を重ね、専門家にも引用されている書籍
また、以下に挙げる点にも着目して「信頼性」を判断することを勧めています。
◆ 誤字脱字、こなれない文章があるかどうか
◆ ポジショントークの可能性がある人かどうか
◆ 執筆者や資料の出典が明記されているかどうか
この本の最後で著者は、新聞社のサイトを見ていると、最近大きな変化が出てきたことに気づく、と指摘しています。それは「鍵付き」の記事の比率が一気に高まり、無料では読めなくなりつつあることです。
新聞社がネットではなく紙にこだわってきたのは、時代の流れに疎かったわけではなく、長い間、関係を築いてきた販売店の経営に打撃を与えることや、印刷工場などで働く従業員の雇用問題などがあって身動きがとれなかったからだ、と著者は言います。
しかしながら、業界全体で年間100万部規模の部数減が続くなかで、新聞社も「痛みを伴う改革」に取り組まざるを得なくなりました。
読者にとって、この変化は「ネットに繋がっていれば、ニュースはタダで読める」という時代は終焉するということです。ポータルサイトやキュレーションアプリを通じて新聞社の記事をタダで読むことは可能ですが、その本数は減っていく、と著者は予言しています。
あなたも本書を読んで、「ポスト真実」時代のネットニュースの読み方を学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を