書評ブログ

『人はなぜ結婚するのか 性愛・親子の変遷からパートナーシップまで』

「結婚とは何か、なぜ人は結婚するのか」――その根源的な問いに真正面から向き合い、共同性・性愛・親子の三つの視点から現代社会を読み解く一冊があります。

本日紹介するのは、1970年福岡県生まれ、一橋大学社会学部卒業、同大学大学院社会学研究科博士後期課程満期退学、博士(社会学)。2014年より立命館大学産業社会学部教授を務め、専門は家族社会学・計量社会学。著書に『仕事と家族』(中公新書)、『結婚と家族のこれから』(光文社新書)、『社会を知るためには』(ちくまプリマー新書)など多数の著作を持つ、現代家族研究の第一人者・筒井淳也(つつい・じゅんや)さんが書いたこちらの書籍です。

筒井淳也『人はなぜ結婚するのか 性愛・親子の変遷からパートナーシップまで』(中公新書)

この本は、離婚・再婚、選択的夫婦別姓、共同親権、同性婚、パートナーシップ、事実婚、生殖補助医療、養子縁組など、結婚制度をめぐる多様な変化と対立を俯瞰しながら、共同性・性愛・親子関係という三つの軸で「結婚の本質」を解き明かす現代社会学の羅針盤です。

本書は以下の7部構成から成っています。

1.結婚のない社会?

2.結婚はどう変わってきたのか

3.「結婚の法」からみえる結婚の遷り変わり

4.同性婚、パートナーシップ、事実婚

5.結婚と親子関係

6.乗りこえられるべき課題としての結婚

7.残された論点

本書の前半では、「結婚のない社会?」および「結婚はどう変わってきたのか」とについて、大胆な問いからスタートし、結婚の歴史的・文化的な意味と変遷をたどります。主なポイントは以下の通り。

◆ 結婚は「生殖・財産・共同生活」を結ぶ社会制度として誕生した

◆ 母系社会では父親の位置づけが曖昧で、結婚観も流動的だった

◆ 家族制度は「家」や「仕事」の枠組みと密接に結びついていた

◆ 近代化により“愛”が結婚の主軸となり、経済的結びつきが弱まった

◆ 結婚の自由化が進むほど、個人の“しんどさ”も増している

この本の中盤では、「結婚の法からみえる結婚の遷り変わり」「同性婚、パートナーシップ、事実婚」および「結婚と親子関係」について、法的側面から現代の結婚を検証しています。主なポイントは次の通りです。

◆ 国や支配者が結婚制度に介入してきたのは、秩序維持と人口管理のため

◆ 自由婚は「自由」なようで、社会制度や慣習に縛られている

◆ 同性婚・シビルユニオンは“結婚の定義”そのものを問い直す契機

◆ 結婚による法的メリット(相続・税制・扶養)は依然として大きい

◆ 制度と現実のギャップを埋める議論が、今後の日本社会に不可欠

本書の後半では、「乗りこえられるべき課題としての結婚」および「残された論点」について、結婚と家族をめぐる最前線の課題を掘り下げます。主なポイントは以下の通りです。

◆ 結婚制度の根幹には「親子関係の安定化」がある

◆ DNA鑑定や代理出産が“父性と母性”の定義を揺るがしている

◆ 養子縁組や同性カップルの育児など、多様な家族形態が出現

◆ 結婚を「義務」ではなく「選択肢」として捉える時代へ

◆ 自由と平等が進むほど、“倫理”と“責任”の問いが重くなる

この本は、単に “結婚するかしないか” の選択を超え、「人と人がどう関わり合い、支え合う社会を築くか」という本質的なテーマに迫っています。

結婚をめぐる議論に息苦しさを感じている人や、リベラルと保守の対立を超えて本質を考えたい人にとって、まさに “現代を生きるための社会学的羅針盤” といえるでしょう。

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では、今日もハッピーな1日を!【3880日目】