マンション防災におけるさまざまな課題を洗い出し、一つずつ解決していく作業を10年以上にわたり続けてきた結果、これまで防災の常識と言われてきたものとは違う「避難所には頼らずに自宅に留まり、自宅で死傷しない対策を取り、10日以上の『在宅避難』ができるノウハウを身に着ける」などのマンション防災の新常識を整理して、公開・解説している本があります。
本日紹介するのは、宮城県仙台市出身、東京都大田区の防災検討委員に推挙されるなど、マンション特有の防災対策の研究を長年続けている災害対策研究会主任研究員 兼 事務局長で、マンション防災士の釜石徹さんが書いた、こちらの新刊書籍です。
釜石徹『マンション防災の新常識』(合同フォレスト)
この本は、直下型地震などの大災害が発生した際、マンション住民が身を守るための第一の選択肢は「在宅避難」であることを提唱し、長年の実践と調査・検証を基に、10日以上の在宅避難を可能にするマンション防災の新しいあり方を、実例を交えて具体的に解説している書です。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.マンション防災を始めるために
2.マンション防災の考え方と備え方
3.自宅で備える 災害時の食料・水・トイレ・連絡方法
4.家庭の防災 災害が発生した時に行うこと
5.災害発生時に行うこととやってはいけないこと マンション防災の初動
6.避難所とはどんなところ?
この本の冒頭で著者は、マンションを襲う自然災害として、➀直下型地震、②海溝型地震、③台風による洪水・停電の3つを挙げ、長期在宅避難に備えておけばどんな自然災害でも対応できると提唱しています。
次に、マンション防災対策の目的として、次の3つを紹介しています。
◆ 自分が住むマンションから死傷者を出さない
◆ 災害が起きた時は人命救助と初期消火に備える
◆ 長期の在宅避難に備えてノウハウを広めておく
続いて、マンション防災対策の方針や防災マニュアルの重要性を説明しています。
次に、マンション防災の考え方と備え方について考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「マンション防災スマートシート」を作成してマニュアルとしておく
◆ 防災委員会と災害対策本部を組織する
◆ 防災委員会の最大の目的は自助の推進
◆ 災害対策のルールを決めておく
◆ 防災訓練やエレベーター閉じ込め時の救出訓練をする
本書の中盤では、自宅で備える災害時の食料・水・トイレ・連絡手段など「家庭の防災力」について、心がまえや具体的な行動を整理して解説しています。要点は以下の通り。
◆ 長期在宅避難に備えて食料や飲料水を自宅内に確保しておく
◆ 家族の誰もが食事を作れる
◆ 家具の転倒防止、ガラス飛散防止
◆ 主食のローリングストックは10日分以上
◆ 災害発生時はあわてて外に飛び出さず、むやみに外出しない
◆ 救難物資は避難所に行けば受け取れる
この本の後半では、マンション防災の初動として、行うこととやってはいけないことを整理して、次のように提示しています。
◆ 被災直後の人命救助と初期消火
◆ 災害弱者は自宅を離れないための準備をする
◆ 災害対策本部は、できるだけ「3密」を作らず、行政から情報や支援物資を受け取る窓口となる
◆ 電話、SNS、マンションのマンホールトイレ、コミュニティをあてにしない
本書の最後では、「避難所はどんなところか」について、その状況や課題、運営のポイントなどについて解説されています。主なポイントは以下の通り。
◆ 避難所に行けば何とかなる、安らげるという場所ではない
◆ 収容予定人数は人口の2割以下しかない
◆ 避難所は大混乱するため、しばらくは近寄らない方がいい
◆ プライバシーがなく、衛星や騒音などの問題が多い
◆ 避難所でも大災害の状況は分からない
◆ 避難所に食料は十分に備蓄されていない
◆ 避難所運営のポイントは、➀来る人を少なくする、②生活ルールを事前に決める、③避難者が主体となって運営する、の3点
この本の締め括りとして著者は、新型コロナウイルス感染症の拡大による「新しい生活様式」の時代でも、1週間以上の在宅避難の備えをしておけば、いかなる災害にも対応でき、それがマンション防災の新常識である、と述べています。
あなたも本書を読んで、大混乱・3密の不安・プライバシーなしという避難所を避け、逃げずに留まる「在宅避難」をベースとしたマンション防災の新常識を実践して、あらゆる災害に備えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2480日目】