書評ブログ

『LGBTQの働き方をケアする本』

「国内におけるLGBTQの権利擁護の取り組みは着実に前進してきている」「しかし、国際水準からみると日本のLGBTQ対応は遅れているといわざるをえず、国連からは複数回にわたり報告を受けています。」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1977年、長崎県にて女性として出生幼少期より性別違和を感じていたが、九州大学文学部卒業後、福岡市役所入庁。児童相談所での児童虐待・非行相談対応など、相談支援業務を中心に10年間従事。30代半ばで男性として生きることを決意し、性同一性障害の診断を受け市役所を退職。2016年より心理学、脳科学、NLPを用いたコンサルティング事業を開始、管理職を対象としたコミュニケーション講座やメンタルコーチング等を提供している、トランスジェンダー当事者、組織の生産性向上と人間関係改善をサポートするメンタルコーチ、株式会社マクアケデザイン代表取締役宮川直己さんが書いた、こちらの書籍です。

 

宮川直己『LGBTQの働き方をケアする本』(自由国民社)

 

 

この本は、LGBTQへの対応を迫られている国内企業の管理職や人事担当者疑問や悩みに答える形で、LGBTQの当事者を部下に持つ(またはその可能性がある)経営者や管理職の皆さんが、ハラスメントを防ぎながら生産性の高い職場作りを行うためのコミュニケーションの手順について解説している書です。

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

1.LGBTQについての基礎知識

2.部下がLGBTQかも?

3.カミングアウトを受けた時の対応

4.カミングアウトを受けた後のQ&A

5.LGBTQもそうでない人も働きやすい職場作り

6.LGBTQ部下とのコミュニケーションのコツ

 

 

この本の冒頭で著者は、LGBTQの当事者のひとりとして、また多くの当事者や企業担当者のコミュニケーション支援を行ってきた経験から、大切なのは次の3点だけだと述べています。

 

◆ 正しい知識を身につけること

◆ 相手を人として尊重する意思を言葉と行動で示すこと

◆ 丁寧に対話を重ねること

 

 

本書の前半では、「LGBTQについての基礎知識」について解説しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ LGBTQとは、レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスゲンダー、クエスチョニング(迷い揺れ動いている人)

◆ セクシュアリティ(性)の3要素は、➀身体の性別、②性自認、③性的指向

◆ LGBTQ理解の3原則: 性的指向や性自認は、①本人の認識のみで決まる、②変えることはできない、③尊重することは人権

◆ SOGI(性的指向・性自認)ハラスメントとアウティング(第三者へ暴露)の問題

◆ ダイバーシティ2.0の推進

 

 

この本の中盤では、「部下がLGBTQかも?」「カミングアウトを受けた時の対応」およびカミングアウトを受けた後のQ&A」について、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 社会全体の問題と伝え、相手に共感する

◆ カミングアウトしたい時にできる職場作り

◆ エンゲージメントの重要性

◆ アライ(仲間・同盟)であることを伝える

◆ 見守る対応が原則

 

◆ カミングアウトは、➀黙って聴く、②「話してくれてありがとう」と伝える、③「秘密は守ります。」と「約束をする、④詳細ヒアリングの提案

◆ カミングアウトの時のNG発言、NG行動に注意

◆ 相手の自己重要感の尊重を意識する

◆ 詳細ヒアリングでは、➀カミングアウトの目的・理由・困っていること、②職場や上司に求めることを聴取する

◆ 信頼関係を築き、職場の配慮が大切

 

◆ 人としての関わりを促す

◆ 性別を問わず使用できるトイレのニーズは高い

◆ 悩みの深さと身体的治療の実施状況は比例しない

◆ 現在の国際的な診断基準を理解すること

 

 

本書の後半では、「LGBTQもそうでない人も働きやすい職場作り」およびLGBTQ部下とのコミュニケーションのコツ」について考察しています。主なポイントは次の通り。

 

◆ LGBTとプライベートな話をするときの注意

◆ 職場の全員に「話したくないプライベートは話さなくていい」と伝える

◆ 解釈の余地がないルールが安心安全な職場を作る

◆ コミュニケーションは「わかろうとする」ことから始める

 

◆ セクシュアリティを尊重して関わる

◆ 伝える内容以上に「伝える順番」を意識する

◆「事実」と「解釈」を区別して、「事実だけを見る」サポートを

◆「セクシュアリティは大切な話だが問題ではない」と伝える

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「LGBTQの当事者にも一人ひとり『心』があり、当事者と関わる人々の一人ひとりにも『心』があります。」と述べています。

 

 

したがって、時に誰かと意見が対立したり、ネガティブな感情を感じることがあっても、相手にも「心」があることを忘れずにいれは事態がひどくこじれることは多くない、と著者は言います。

 

 

あなたも本書を読んで、職場の全員がLGBTの働き方を理解してケアする「個性に向き合う会社」を作っていきませんか。

 

 

ビジネス書の紹介・活用法を配信しているYouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』の「紹介動画」はこちらです。ぜひ、チャンネル登録をしてみてください。

 

 

では、今日もハッピーな1日を!【2773日目】