「トランプ・ショック」の本質は通貨政策にある――そんな衝撃的な指摘から始まる本があります。
本日紹介するのは、1971年生まれ、東京大学教養学部(国際関係論)卒業後、エディンバラ大学大学院に留学し博士号を取得、複数の著書でグローバリズムへの警鐘を鳴らしてきた評論家の中野剛志(なかの・たけし)さんが書いた、こちらの書籍です。
中野剛志『基軸通貨ドルの落日 トランプ・ショックの本質を読み解く』(文春新書)
本書は以下の6部構成から成っています。
1.マールアラーゴ合意
2.通貨とは何か
3.基軸通貨国の特権
4.グローバル・インバランス
5.テクノ・リバタリアンと暗号通貨
6.トランプ・ショック後の世界
この本の冒頭で著者は、関税措置ばかりに注目が集まるトランプ・ショックの本質は、実は通貨政策にあり、アメリカが基軸通貨ドルの地位を利用して既存の国際通貨体制を破壊し、自国有利な仕組みに作り変えようとしていると指摘します。
本書の前半では、「マールアラーゴ合意」および「通貨とは何か」について、以下のポイントが解説されています。
◆ トランプ政権の真の狙いは、ドル安誘導による製造業競争力の強化にある。
◆ 通貨は単なる交換手段ではなく、国力と安全保障を反映する政治的なツールである。
◆ ニクソン・ショックと同様、通貨政策は国際秩序を根底から揺るがす力を持つ。
◆ 基軸通貨ドルは、アメリカに経済的な「特権」をもたらしてきた。
◆ 関税と通貨戦略は一体であり、外交交渉の武器としても機能している。
この本の中盤では、「基軸通貨国の特権」および「グローバル・インバランス」について説明されています。主なポイントは次の通り。
◆ 基軸通貨国は、対外債務を自国通貨建てで発行できるという圧倒的な優位性を持つ。
◆ 1980年代以降のグローバル経済は、「債務主導」国と「輸出主導」国の二極構造を形成した。
◆ アメリカは消費を拡大し、他国は輸出で成長を維持するという「不均衡」が固定化。
◆ リーマン・ショックでバブルが崩壊し、両レジームとも成長困難な時代に突入した。
◆ この不均衡こそが、アメリカの通貨戦略転換を促す最大の要因となった。
本書の後半では、「テクノ・リバタリアンと暗号通貨」および「トランプ・ショック後の世界」について解説されています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 暗号通貨やデジタル金融は、既存通貨体制を揺さぶる潜在的な力を持つ。
◆ トランプ流の通貨政策は長期的には失敗すると著者は断言する。
◆ その失敗は、リベラルな国際経済秩序の終焉を加速させる。
◆ 国際通貨体制の崩壊後、世界経済は不安定な多極化時代へ移行する可能性が高い。
◆ 日本を含む各国は、ドル依存からの脱却を迫られる。
この本の締めくくりとして著者は、「通貨の視点を持たない国際経済論は、現実を見誤る」と警鐘を鳴らします。トランプ・ショックの真の意味を理解するためには、基軸通貨ドルの地位とそれを巡る国際政治経済の構造を読み解く必要があるのです。世界経済の大転換期を俯瞰できる一冊です。
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では、今日もハッピーな1日を!【3819日目】