書評ブログ

『健康格差 あなたの寿命は社会が決める』

「低所得の人死亡率は、高所得の人のおよそ3倍」という衝撃的な事実を明らかにし、「あなたの寿命は社会が決める」と述べている本があります。

 

 

本日紹介するのは、2016年9月19日放送NHKスペシャル「私たちのこれから 健康格差~あなたにしのび寄る危機~」にてNHK取材班が撮影した画像を使用し、その番組内容を中心に大幅に取材を加えて執筆した、こちらの書籍です。

 

 

NHKスペシャル取材班『健康格差 あなたの寿命は社会が決める』(講談社現代新書)

 

 

この本は、「健康格差」は、人の命の格差に直結していく取り返しのつかない社会問題だ、という問題意識のもとに、世界や日本の各地で行われている格差縮小のための取り組みを取材して紹介しながら、今後の政策提言まで踏み込んで記した書です。

 

 

 

本書は以下の6部構成から成っています。

 

 

1.すべての世代に迫る「健康格差」

 

2.秋田県男性が短命な「意外な理由」

 

3.イギリスの国家的対策と足立区の挑戦

 

4.「健康格差」解消の鍵は?

 

5.白熱討論!「健康格差」は自己責任か

 

6.拡大する日本人の「命の格差」

 

 

 

この本の冒頭で著者は、WHO(世界保健機関)「健康格差」を生み出す要因として、以下の4つが背景にある、と指摘し、「健康格差」を解消するよう各国に求めていることを紹介しています。

 

 

1.所得

 

2.雇用形態

 

3.地域

 

4.家族構成

 

 

 

「健康格差」は、一見「自らの健康管理を怠ったゆえの自業自得」と捉えられることが少なくありません。いわゆる「自己責任論」です。

 

 

しかしながら、ことはそれほど単純ではなく、この「健康格差」を放置すれば、医療費や介護費の増大を招くだけでなく、破綻寸前にあると揶揄される日本の国家財政をさらに圧迫する大きな問題に発展します。

 

 

まず働く若者について、貧困や非正規労働によるストレス未婚化による栄養の偏った食生活など、現代社会の構造変化が「健康格差」を生み出していることが指摘されています。

 

 

次に高齢者に迫る危機として、「ひとり暮らし高齢者」の増加や、介護や認知症の危機が迫っていることが紹介されています。

 

 

さらに、子どもに迫る危機として、子どもの貧困子どもの栄養状態・肥満の増加など、子どもに関する構造的な問題も「健康格差」に深く関わっていることが本書では解説されています。

 

 

こうした所得、雇用形態、家族構成の3つが複雑に絡み合って現役世代、高齢者、子どものそれぞれの世代「健康格差」が生まれている実態が明らかにされています。

 

 

 

そして、次に「地域」による格差として、秋田県イギリスの事例が取り上げられ、それぞれ塩分摂取量をいかに抑えるかという取り組みが紹介されています。

 

 

実は、塩分の過剰摂取が、糖尿病をはじめ、さまざまな生活習慣病のもとになっています。とくにイギリスが国家的対策として取り組んだCASH(塩と健康に関する国民会議)という団体が発した斬新な減塩方法は8年間で大きな効果を上げました。

 

 

これは、消費者に気づかれないよう、時間をかけて段階的に塩分を減らせば、売上を減らすことなく、味を変えられるという考え方です。

 

 

イギリス人の場合はとくにパンから塩分を摂る割合が高いため、減塩パンの取り組みで、最終的に25%減塩のパンを食べる形に変えました。

 

 

病気になりそうな人だけをターゲットにする「ハイリスク・アプローチ」ではなく、すべての人を対象にする「ポピュレーション・アプローチ」が効果を発揮することが、このイギリスの事例や、足立区の取り組みから、よく分かります。

 

 

このほかにも、この本では、幸手プロジェクト(埼玉県)や、ソーシャルキャピタルで世界が注目する武豊町(愛知県)「憩いのサロン」などの「健康格差」解消の取り組み事例が紹介されています。

 

 

 

また最後には、「健康格差」は自己責任かという白熱討論と、拡大する日本人の「命の格差」について、イチロー・カワチ教授(ハーバード大学)へのインタビューが掲載されいていて、参考になります。

 

 

あなたも本書を読んで、改めて「健康格差」という問題について考えてみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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