書評ブログ

『経営者を育てるアドラーの教え』

私はアドラー心理学を学ぶほどに、「経営者こそアドラー心理学が必要だ」という思いに到りました、と述べて、「なぜアドラー心理学が経営に役立つのでしょうか」と問いかけている本があります。

 

 

本日紹介するのは、1947年栃木県生まれ、早稲田大学卒業後、外資系企業の管理職などを経て、1985年にヒューマン・ギルドを設立し、アドラー心理学に基づくカウンセリンング、カウンセラーの養成をしてきたアドラー心理学カウンセリング指導者上級教育カウンセラー岩井俊徳さんが書いた、こちらの書籍です。

 

 

岩井俊徳『経営者を育てるアドラーの教え』(致知出版社)

 

 

この本は、アドラー心理学が「人間学」そのものの心理学であることに気づいた著者が、自らの原点である「中小企業の経営」に活かすことができると発想して、「経営者を育てるアドラーの教え」として経営者に指針を与えるために記された書です。

 

 

 

本書は以下の7部構成から成っています。

 

 

1.令和時代の経営者に求められる四つの条件

 

2.尊敬(リスペクト)

 

3.信頼(トラスト)

 

4.共感(7エンパシー)

 

5.協力(コーポレーション)

 

6.まとめ

 

7.あとがき

 

 

 

この本の冒頭で著者は、経営者にこそアドラー心理学が必要な3つの理由を、次の通り挙げています。

 

 

◆ 会社にはさまざまな個性を持つ人間が参加している

 

◆ アドラー心理学は、過去の原因は問わず、未来に向けて何ができるかを模索するものである

 

◆ アドラー心理学のベースにある「勇気づけ」という考え方が組織を元気にする

 

 

 

続いて、平成の時代「恐怖・不信・軽蔑による支配」で停滞していたため、令和の時代はそれを卒業し、「尊敬・信頼・共感・協力」に基づく人間関係へ変わる、と述べています。

 

 

 

平成の遺物として、企業には「勇気くじき体質」が残っているため、これを令和の時代は「勇気づけ体質」にシフトしなければならない、と著者は言います。

 

 

 

つまり、尊敬と信頼で動機づけ、プラス思考で考え、未来志向で、大局を見て、ユーモアで対処するといったことです。

 

 

 

この後、本書の中盤では、令和の時代の新しい経営者のあり方アドラー心理学の「尊敬・信頼・共感・協力」という4つの考え方をベースに探っています。

 

 

 

まず第1の「尊敬(リスペクト)」ですが、著者は以下のように定義しています。

 

 

「人それぞれに年齢・性別・職業・役割・趣味などの違いがあるが、人間の尊厳に関しては違いがないことを受け入れ、礼節をもって接する態度」

 

 

 

次に、アドラー心理学を用いた叱り方のポイントとして、①怒りを随伴させない、②期待を示す、の2つを踏まえた上で、注意の与え方として、以下の3つを挙げています。

 

 

1.相手の不適切な習慣や行動を改めさせる

 

2.相手を一段上のレベルに成長させる

 

3.やる気がない人にやる気を起こさせる

 

 

 

さらに、内発的動機づけが有効だとして、次の4つの要件を説明しています。

 

 

◆ 自律性への欲求

 

◆ 有能さへの欲求

 

◆ 関係性への欲求

 

◆ エキサイトメントへの欲求

 

 

 

第2の「信頼(トラスト)」については、イノベーションの生まれる原点は、結合・コンビネーションの力で、自分の強みを知った上で相手を見ることが重要だ、としています。

 

 

 

つまり、自分の持っている可能性と相手の持っている機会を結びつける、これが成功の方程式なのです。

 

 

 

第3の「共感(エンパシー)」については、共感とは自分自身の行動を俯瞰する目を持つことだ、として、相手を効果的に説得するポイントとして、以下の5つを挙げています。

 

 

1.相手のニーズを突く

 

2.使命感や貢献感に訴える

 

3.五感に訴える

 

4.鍵となる言葉(キーワード)を残す

 

5.命令口調ではなくて、依頼口調を使う

 

 

 

4番目の「協力(コーポレーション)」については、「パラリンピックの父」と呼ばれるルードウィッヒ・グッドマン博士「失われたものを数えるな。残されたものを最大限に活かせ」という言葉を紹介しています。

 

 

 

つまり、人が何を持って生まれたかではなく、与えられたものをどう使いこなすかが重要だ、ということです。

 

 

 

さらに、数多くの自己啓発書を著わしているアメリカの牧師であるロバート・シュラー「困ったときは十のアイデアを出せ」という言葉を紹介し、経営者は困った時こそ、アイデアを絞り出すことが重要だと、自らの経験も示しながら解説しています。

 

 

 

続いて、「ダメ出し」の反対で、良い点を見ようという「ヨイ出し」を推奨しています。そして、感謝すべき場面で感謝していないことが多いことから、「感謝の見逃し三振はしてはいけない」と提唱しています。

 

 

 

また、モチベーションのファクターとして「4 SIONs+LOGIC」を挙げています。4 SIONsとは、以下の4つです。

 

 

◆ MISSION(ミッション)

 

◆ VISION(ビジョン)

 

◆ DECISION(決断)

 

◆ PASSION(パッション)

 

 

 

本書の「まとめ」として著者は、「生産性を高めるためには、人間性を復活させよう」と提唱しています。とくにミッションとパッションを取り戻すことです。

 

 

 

そして、異質な個性のぶつかり合い(異床同夢)が会社力を高める、と著者は言います。

 

 

 

あなたも本書を読んで、経営者の意識と行動が代われば、会社が変わることを学んでみませんか。

 

 

 

2020年12月8日に、YouTubeチャンネル『大杉潤のyoutubeビジネススクール』【第178回】経営者を育てる「アドラーの教え」にて紹介しています。

 

 

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【2424日目】