書評ブログ

『会社のなかの「仕事」社会のなかの「仕事」 資本主義経済下の職業の考え方』

「現代日本には、やりがい搾取の蔓延、カスタマーハラスメント、なくならない超長時間労働、企業文化の硬直性といった、仕事に関わる様々な問題があります。」と述べている本があります。

 

本日紹介するのは、1976年岐阜県岐阜市生まれで、社会学者、甲南大学教授(専門:労働社会学、家族社会学、社会調査論)阿部真大さんが書いた、こちらの書籍です。

 

阿部真大『会社のなかの「仕事」社会のなかの「仕事」 資本主義経済下の職業の考え方』(光文社新書)

 

この本は、「仕事を、会社などの『組織』とは別に『社会』のなかに位置づけ直す必要があり、それこそが今、求められている仕事の捉え方=『職業』の本来的なあり方である」ということを中心テーマとしている書です。

 

 

本書は以下の3部構成から成っています。

 

1.働く人を守る「職業」

2.組織を強くする「職業」

3.補論 ——ポスト戦後社会と「職業」

 

この本の冒頭で著者は、「この本は自由主義経済を否定するものではない」「この本は、技術のイノベーションを可能にし、社会を発展させる自由主義経済を前提としつつ、そのバグをいかに修正して持続可能なものにしていくかという問題への関心をベースに書かれています。」と述べています。

 

 

本書の前半(第1部)では、「やりがい搾取を考え直す」および「池井戸潤と戦後ヒューマニズム」について、以下のポイントを説明しています。

 

◆ 職業の社会的役割の明確化

◆ 労働組合の再活性化

◆ ユーモアのベースとなる「職業人教育」の実践

◆「やりがい搾取」の温床であるサービス業の「お客様ファースト」

◆ 過剰サービスが当たり前になる傾向

 

◆ 現場の声に耳を傾けることが重要

◆ ユーモアを言うことで職業集団の連帯感が高まる

◆ 公共園の再生と「やりがい搾取」の克服

◆「やりがい搾取」とカスタマーハラスメント

◆ 戦後ヒューマニズムから脱却して公共園の再生を

 

 

この本の中盤(第2部)では、「職業人 vs. 組織人」および「パートタイム田舎就労の可能性とオルト・エリートの挑戦」について解説しています。主なポイントは以下の通り。

 

◆ 短期的に資本が求める仕事をする「組織人」

◆ 長期的に自らの専門性を深める「職業人」

◆ 職業人としての能力低下は、組織マネジメント上も大きな問題

◆ 働く者を「職業人」でい続けさせる「脱組織のマネジメント」

 

◆ グローバル化のバックラッシュ(反動保守)として日本型雇用への憧憬

◆ ローカル・エリートによる草の根レベルの啓蒙

◆「パートタイム田舎就労」は、職業の社会的役割に気づかせる

◆ 働き方の「草の根からのグローバル化」

 

 

本書の後半(補論)では、「不安定な職場で軽やかに生きるために」および「組織文化の脱ジェンダー化とテレワーク」について考察しています。主なポイントは以下の通りです。

 

◆ 戦後日本は、「抑圧的な職場を茶化すこと」が「よきこと」に

◆「茶化し」「ズラし」は、その安定性が揺らいだ時点で有効性を失う

◆ 戦後日本の「ソ連化」

◆ 職場の安定性に左右されない、社会の中における仕事=「職業」

 

◆ 脱ジェンダー化するためには、メンバーシップ型からジョブ型の組織文化へ

◆ メンバーシップ型テレワークの誕生

◆ 組織文化の脱ジェンダー化には内発的な改革を積み重ねる

◆ ジョブ型の組織文化にこそ、「職業人」のメンタリティは育まれる

 

 

本書で書かれている「職業」という考え方は、拙著『定年ひとり起業』シリーズ3部作、とくに『定年ひとり起業生き方編』(いずれも自由国民社)で提唱している生涯現役を目指す「トリプルキャリア」の考え方と共通する部分が多く、深く感銘を受けました。

 

 

この本の締めくくりとして著者は、「元気な人はもっと元気に、そうではない人はゆるく生きられる社会というのが、私の考える理想の社会のあり方」と述べています。

 

 

あなたもこの本をを読んで、社会のなかの仕事の捉え方である「職業」について考え、自らの「働き方」を見直してみませんか。

 

 

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では、今日もハッピーな1日を!【3193日目】