「本書が最も重視する『日本の危機』は少子化による人口減ですが、実は、この問題は、教育崩壊や過剰投資、国際摩擦といった問題ともきわめて深い関係を持っています。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1956年生まれ、京都大学経済学部卒業、同大学大学大学院経済学研究科博士後期課程修了、京都大学経済学博士、立命館大学経済学部助教授、京都大学大学院経済学研究科助教授、同教授を歴任、慶應義塾大学経済学部教授、慶應義塾大学定年退職、同年慶應義塾大学名誉教授、世界政治経済学会副会長の大西広さんが書いた、
大西広『「人口ゼロ」の資本論 持続不可能になった資本主義』(講談社+α新書)
この本は、「日本の少子化は人々が望んでもたらしているのではない、子供をつくろうとしてもできない状態に労働者がおかれていることが原因している」という問題をマルクス経済学は具体的にどのように考え、どのような解決策を提起しているのかを論じている書です。
本書は以下の10部構成からなっています。
1.日本人口は2080年に7400万人に縮む
2.労働者の貧困化が人口減の根本原因
3.経済学は少子化問題をどのように論じているか
4.マルクス経済学の人口論
5.人口論の焦点は歴史的にも社会格差
6.ジェンダー差別は生命の再生産を阻害する
7.人口問題は「社会化された社会」を要求する
8.人口問題は「平等社会」を要求する
9.真の解決は国際関係も変える
10.資本主義からの脱却へ
この本の冒頭で著者は、人口減と教育崩壊、過剰投資、国際摩擦との関連性を述べて、これらに通底する問題として「格差の問題」を提起しています。
本書の前半では、「日本人口は2080年に7400万人に縮む」および「労働者の貧困化が人口減の根本原因」について、以下のポイントを説明しています。
◆ 地方も東京も高齢化による衰退が加速する
◆ 世界で突出して少ない日本の年少者人口比率
◆ 格差社会の深刻化で結婚できない
◆ 結婚・出産は貧困への道
◆ 中国の少子化と違って、高学歴化が進まない日本の少子化
この本の中盤では、「経済学は少子化問題をどのように論じているか」「マルクス経済学の人口論」および「ジェンダー差別は生命の再生産を阻害する」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 子どもが多いほど嬉しいが、1人あたりの嬉しさは減る
◆「人の軽視」が生んだ人口減(人間に労働の分配をせずにい続けると人口減
◆ 労働者の貧困化が結婚もできず、子どもも作れない原因に
◆ 教育費の高騰で少子化は不可避
◆ 少子化=人口減の問題は、「資本」と「ヒト」の重点選択の問題
◆ 外部からの人口補給としての移民
◆ 人口論の焦点は歴史的にも社会格差
◆ ロボットに人間は作れない
本書の後半では、「人口問題は社会化された社会を要求する」「人口問題は平等社会を要求する」「真の解決は国際関係も変える」および「資本主義からの脱却へ」について考察しています。主なポイントは以下の通り。
◆ 社会主義とは「社会化された社会」のこと
◆ 教育の無償化は人口政策
◆ 貧困者を作らなければいけないのが資本主義
◆ 人口減→労働力不足→外国人労働力への依存
◆ 欧米的にならない日本の道
◆ 企業行動への国家の強制介入も必要に
◆ 格差が廃止された社会
◆ 若者が結婚し、子どもを持ちたいと考えるようになるには、貧困をなくす
この本の締めくくりとして著者は、「人口問題はいよいよ深刻な問題になっていますが、状況を見るに、これはどう見ても進行する貧困問題の裏返しの問題であります。」と述べています。
あなたも本書を読んで、持続不可能になった資本主義について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3251目】