「もし今のまま働き続けて、人生最期に後悔しないと言い切れますか?」と問いかける本があります。
本日紹介したいのは、コーチングの第一人者である榎本英剛さんによる「異色の仕事論」を記した、こちらの書です。
榎本英剛『本当の仕事』(日本能率協会マネジメントセンター)
この本は、30代初めにリクルートを辞めて米国へ自費留学をしたことを人生の大きな転換期とし、米国でコーチングを学んで「天職創造セミナー」を立ち上げた著者の榎本英剛さんの経験をベースに書かれています。
「仕事をどうとらえるか」や「なぜ仕事をするのか」といった「仕事観」は人生を大きく左右するほどの影響力を持っています。
本書によれば、「仕事観」とは、「見えない物語」であり、見えないがゆえに、その人が知らないうちにその人の人生を支配し、左右してしまうほどの強烈な力を備えています。
現代を生きる多くの日本人が持っている代表的な仕事観は以下の4つであると著者は言います。
1.仕事とは、「生計を立てるための手段」である
2.仕事とは、「やりたくないことをやる」ことである
3.仕事とは、「既存の職業に自分を合せる」ことである
4.仕事とは、「同時に1つしか持てない」ものである
これらを本書では「4つのメガネ」と呼んでいて、これは「モノの時代」の産物だと言います。現在は、「ココロの時代」に変化しており、そこでは上記4つの「仕事観」は、以下のようにシフトしていくことが求められます。
1.仕事とは、「自らの存在意義を探求し、表現する」ことである
2.仕事とは、「やりたいことをやる」ことである
3.仕事とは、「仕事を自分に合せる」ことである
4.仕事とは、「同時に複数持ってもいい」ものである
本書は以下の5部構成から成っています。
1.「本当の仕事」を求めて
2.存在意義-なぜ「お金のため」と言い訳しながら働くのか
3.純粋意欲-なぜ「やりたいこと」を仕事にしないのか
4.天職創造-どうすれば「やりたいこと」で生計を立てられるのか
5.共鳴行動-天職を創造するために、まずどこから始めるか
本書では、仕事=存在意義ととらえており、それは進化するものだ、ということです。仕事には、「内なる仕事」と「外なる仕事」とがあり、通常は「外なる仕事」のみに意識が奪われがちです。
心から何かをやりたいという気持ちは、神様が自分に与えてくれた贈り物に違いないと本書ではとらえ、このように自分の奥底から湧いてくるような「これがやりたい」という気持ちのことを、「純粋意欲」と呼んでいます。
純粋意欲には理由もいらなくて、自然に湧いてくるものだと著者は言います。また、「問題」から「苦しみ」が生まれ、その苦しみから「純粋意欲」が生まれ、その純粋意欲から「天職」が生まれる、という一つの流れがある、と著者は言います。
したがって、世の中に「問題」がある限り、仕事がなくなることは決してないと思います。そして、一人ひとりに果たすべき役割がある、ということでしょう。
もうひとつ、本書で私が感銘を受けたのは、「ポートフォリオ・キャリア」という考え方です。仕事は、「やりたいこと」と「やりたくないこと」の2種類に分かれ、さらに「収入が得られるもの」と「収入が得られないもの」との2種類に分類されるため、第1~第4象限まで4つのポートフォリオに分類できるということです。
これは、収入を1つの仕事に求めるのではなくて、「複職」をして複数の収入源を持つという考え方です。複数の収入源があった方が、何かあった時に柔軟に対応できると言う点で、これまでのように1つの収入源を頼りにするよりもリスクが少ないうえに、より自由で創造的な生き方ができます。
時間という要素を考慮に入れたうえで、「現実的に」第3の道を追求していくための方法が「複職」という発想です。アメリカでは、特にやりたいわけではないけれど、生計を立てるためにやむなくやる仕事のことを「タクシー・ジョブ」と言います。
なぜそう呼ぶかと言うと、そういう仕事として実際にタクシーの運転手を選ぶ人が多いということと、目的地に着くまで自分を乗せていってくれる仕事という2つの意味があるからだ、ということです。
また、本書の後半で、著者の榎本さんは、「あなたが心から本当にやりたい仕事をしたら、必ず食べていけます」と断言します。実は、アメリカの心理学者マーシャ・シネターが次の書で同じことを提唱しています。
マーシャ・シネター『ワクワクする仕事をしていれば、自然とお金はやってくる』(ヴォイス)
人が何かを心からやりたいと思って、それをやるとき、それは「その人個人のビジネス」というより、「神のビジネス」だと本書では述べています。
その想いにしたがって行動していれば、その実現に必要な資源、つまり人やモノや金はすべて神が用意してくれる、ということです。
また本書では、「そんなことやったってどうせ無駄さ」とか「今まで何か新しいことをやってうまくいったためしがない」という、「悪魔のささやき」にどう対処するか、が記されています。
恐怖を感じた時は、「怖がっているのは自分ではなく悪魔クンだ」と考えて、その恐怖心を客体化してしまえばいい、ということです。
そして、結果については心配するのではなく、「ギブアップせよ」、すなわち「天に任せよ」ということです。自分にコントロールできない「結果」について、あれこれ心配するよりも、プロセスや行動に集中して、「結果」は神様に預けるくらいがいい、ということです。
著者の榎本英剛さんが学んだCTIのコーアクティブ・コーチングの理解については、こちらの本がバイブルとして分かりやすいと思いますので、紹介しておきます。
ヘンリー・キムジーハウスほか『コーチング・バイブル』(東洋経済新報社)
本書の後半で、著者の榎本さんは、天職とは、探すものではなくて、自ら創り上げる「創職」だと述べています。そして、「職創」や「複職」というのは、自らの存在意義を核とした複数の仕事から成るポートフォリオを作り上げることを意味している、と説明しています。
本書の最後にまとめとして、「天職創造の4つのステップ」が記されています。
1.自分の純粋意欲に気づく
2.気づいた純粋意欲を人に話す
3.そこで起こる共鳴を見極める
4.その共鳴を指針として行動を起こす
それは、「開き」の哲学だと述べられています。まず①「耳」を開いて自分の奥底から湧き出てくるメッセージを聴き取ります。次に②「口」を開いて自分の「本心」や「真実」を人に語ります。そして③「目」開き、自分の「真実」に対して世の中がどのような反応をするかを見極め、④「足」を開いて結果を恐れずに行動します。
そして、これら4つのステップの全体を通して、「心」を開くことが重要だということです。
あなたも本書を通して、自分にとっての「本当の仕事」について、今一度考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!