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『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来 物価高、低賃金に打ち勝つ秘策』

「物価は上がるのに賃金は上がらない」――そんな生活者の苛立ちを正面から受け止め、解決の糸口を提示する一冊があります。

本日紹介するのは、仙台市生まれ、1993年に東北大学工学部原子核工学科を卒業後、日経BP社で記者として活動。その後、野村證券グループの投資ファンド運用会社で企業評価や投資業務を担当し、独立後は中央省庁や政府系金融機関へのコンサルティングに従事。現在は数多くのテレビ番組で解説者やコメンテーターを務め、「ニューズウィーク日本版」などに連載を持つ経済評論家・加谷珪一(かや・けいいち)さんが書いたこちらの書籍です。

加谷珪一『本気で考えよう! 自分、家族、そして日本の将来 物価高、低賃金に打ち勝つ秘策』(幻冬舎新書)

本書は以下の9部構成から成っています。

1.多くの人が感じているイライラの正体

2.物価が上がり続ける本当の理由

3.円安は大規模緩和策の結果として発生している

4.日本の公的年金はそれほど悪い制度ではない

5.賃金が上がらない理由はハッキリしている

6.手取りを増やす方法論

7.消費税以外にも税収を増やす方法はある

8.筆者の資産形成の具体的方法を公開

9.お金に振り回されない人生を送るために

 

この本の冒頭で著者は、付け焼き刃の減税やバラマキ政策に期待しても生活は豊かにならないと警告し、「制度の仕組みを理解し、自らの手で“手取りを増やす”工夫をすることこそが必要だ」と強調しています。

本書の前半では、第1部から第3部にかけて、物価高や円安が進む背景を丁寧に分析。主なポイントは以下の通りです。

◆日本人が抱える「生活が苦しい」という感覚の正体は、実質賃金の低下にある

◆物価高騰の本質は「世界的な構造変化」とエネルギー・食料価格の上昇に起因

◆円安は日銀の大規模緩和策の帰結であり、単純な為替介入では解決できない

◆インフレと賃金停滞のダブルパンチが家計を直撃している

◆根本的な原因を直視しない限り、「その場しのぎ」の政策では効果がない

 

本書の中盤では、第4部から第7部にかけて、年金や税制の実態を解説しながら、生活を守るための方策を提言しています。主なポイントは以下の通りです。

◆日本の公的年金は制度設計としては悪くなく、むしろ堅実な仕組みである

◆「年金破綻論」は誤解であり、制度を理解すれば安心材料も多い

◆賃金が上がらない理由は企業の内部留保偏重と労働市場の硬直化にある

◆手取りを増やすには、税・社会保険料の仕組みを理解して最適化を図ること

◆消費税以外にも税収を確保する余地はあり、財源論に多様な選択肢がある

本書の後半では、第8部と第9部において、著者自身の資産形成法と人生観が語られます。主なポイントは以下の通りです。

◆資産形成は「攻め」であり、投資を通じて未来を切り拓く必要がある

◆守りとして「年金」を正しく理解し、自分の老後設計に組み込むことが大切

◆著者自身は、分散投資やリスク管理を徹底しながら資産形成を実践してきた

◆資産形成と同時に「取り崩し」「たたみ方」まで設計することが不可欠

◆お金に振り回されず、自分と家族にとって大切な価値観に基づいた人生を送るべき

この本の締めくくりとして著者は、「制度を理解し、自ら動くことでしか、生活は変わらない。今こそ本気で考える時だ」と述べています。社会に流されず、主体的に未来を設計するための実践的な一冊と言えるでしょう。

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では、今日もハッピーな1日を!【3826日目】