時代の潮流の大きな変化によって、マスメディアへの大量露出を仕掛けてブームを作り出すかつての「ヒットの方程式」が成立しなくなってきた、と提唱している本があります。
本日紹介するのは、音楽ジャーナリストとして、雑誌・ウェブ・モバイルなど各方面にて編集とライティングを担当し、音楽やサブカルチャー分野を中心に幅広くインタビュー、記事執筆を手がける柴那典さんが書いた、こちらの書籍です。
柴那典『ヒットの崩壊』(講談社現代新書)
この本は、様々な角度から取材を重ね、現在の音楽シーンの実情を解き明かすルポルタージュです。
本書は以下の6部構成から成っています。
1.ヒットなき時代の音楽の行方
2.ヒットチャートに何が起こったか
3.変わるテレビと音楽の関係
4.ライブ市場は拡大を続ける
5.J-POP の可能性ー輸入から輸出へ
6.音楽の未来、ヒットの未来
この本の最初で著者は、1990年代から現在に至るまで、音楽ビジネスを巡る状況がどう変わってきたかを解説しています。
日本を代表するヒットメーカーだった音楽プロデューサー・小室哲也さんと、いきものがかり・水野良樹さんという二人の作り手にインタビューして、それぞれのスタンスやヒット曲についての考え方を探っています。
次に、ヒットチャートの変化について、極端な結果を示すようになった「オリコン年間ランキング」から、「AKB商法」とも言われる特典商法がヒットチャートを「ハッキング」してきた経緯を示しています。
さらに、テレビの音楽番組を取り上げ、2010年代になって民放各局で放送されるようになった「超大型音楽番組」の登場や、その長時間化が何を意味しているのかを解き明かします。
そこには、東日本大震災の影響や、「モノ」より「体験」を重視する消費の変化という流れの中で、ライブ形式が視聴者を引き付ける構図がある、ということです。
この本の後半では、ライブビジネスが音楽産業の中心になった背景を説明し、「現場」というキーワードを著者は強調しています。
今や音楽業界の構造が変わり、「CDよりもライブで稼ぐ時代」になったのです。消費者も「聴く」から「参加する」へ変化してきており、「みんなで踊る」がブームになりつつあります。
続いて本書では、音楽の中味について考察していて、海外への憧れとコンプレックスの時代を脱し、今や「J-POP」という日本発ポップ・カルチャーが海外へ進出する時代になっています。
そこでもライブパフォーマンスの魅力や、日本独自の文化・感性などが海外で支持されているという背景がある、ということです。
この本ノ最後で著者は、大きな転換期を迎えている世界全体の音楽市場の動向を見据え、日本の音楽シーンの先行きを探っています。
今や「聴き放題」サービスが主流となり、「所有」から「アクセス」へと音楽に対する消費が構造変化しました。
日本はそうした世界の潮流に乗り遅れていて、今後は、日本音楽の多様性をいかに世界に伝えていくかだ、と著者は言います。
まさに著者の言う「ヒットの崩壊」は、単なる不況ではなく、構造的な問題だということでしょう。
あなたも本書を読んで、「モノ」から「体験」へという人々の価値観の抜本的な変化と、それが消費に及ぼす影響を学んでみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を