書評ブログ

『現代社会はどこに向かうか ー 高原の見晴らしを切り開くこと』

「現代社会は、人間の歴史の中の、巨大な曲がり角にある。」と説いている本があります。

 

 

本日紹介するのは、東京大学名誉教授で、現代社会論、比較社会学、文化の社会学を専攻する見田宗介さんが書いた、こちらの新刊新書です。

 

 

見田宗介『現代社会はどこに向かうか ー 高原の見晴らしを切り開くこと』(岩波新書)

 

 

この本は、斬新な理論構築と、新たなデータに基づく徹底した分析のもとに、新しい時代がどこに向かうのかという巨大な問いに正面から応答している書です。

 

 

 

本書は以下の8部構成から成っています。

 

 

1.現代社会はどこに向かうかー高原の見晴らしを切り開くこと

 

2.脱高度成長期の精神変容ー近代の矛盾の「解凍」

 

3.ヨーロッパとアメリカの青年の変化

 

4.ダニエルの問いの円環ー歴史の二つの曲がり角

 

 

5.生きるリアリティの解体と再生

 

6.ロジスティック曲線について

 

7.高原の見晴らしを切り開くこと

 

8.世界を変える二つの方法

 

 

 

この本の冒頭で著者は、古代ギリシャではじめての「哲学」が生まれ、仏教儒教が生まれ、キリスト教の基となる古代ユダヤ教のめざましい展開のあった「軸の時代」が、現在に至る二千数百年間の人間の精神の骨組みとなる考え方が形成された時代で、人間の歴史の第一の「巨大な曲がり角」だったと述べています。

 

 

この「軸の時代」の現実的な背景は、「貨幣」経済と、「都市」の社会の勃興であり、それまでの共同体の外部の世界、「無限」に開かれた世界の中に初めて投げ出された人々の、底知れぬ恐怖と不安と開放感だった、と著者は説明しています。

 

 

そして、現代の人間が直面するのは、環境的にも資源的にも、人間の生きる世界の有限性という真実で、この有限性を生きる思想の確立が課題なのです。

 

 

つまり、この第二の「巨大な曲がり角」に立つ現代社会は、どのような方向に向かうのだろうか、人間の精神は、どのような方向に向かうのだろうか、という問いに対する正面からの応答が本書の主題です。

 

 

 

次に、高度経済成長の完了した局面での、日本人の「心の変化」を測定する基本的なデータとして、1973年以来5年ごとに行われてきたNHK放送文化研究所「日本人の意識」調査が紹介されています。

 

 

40年間の青年の精神の変化の大きい項目は、「近代家父長制家族」のシステムと連動するメンタリティの解体です。そして続いては、「生活満足度の増大」が挙げられています。

 

 

3番目として、「魔術的なるもの」の再生、あるいは合理主義的な世界像のゆらぎがあります。

 

 

これら3つの関係は、経済成長課題の完了、これによる合理化圧力の解除・減圧ということにより、一貫した理論スキームとして説明できます。

 

 

 

さらに、現場からの報告として、三浦展さんによる観測が紹介されています。それは、次の著書にも記されている、ということです。

 

 

 

また、この流れの中で、シンプルな衣食住を提案する店シンプルな暮らしを提案する雑誌が売れているそうです。

 

 

そして、ヨーロッパやアメリカの青年の変化を見るのに有効なデータとして、1981年に開始された「ヨーロッパ価値観調査」および、これを基に拡大された「世界価値観調査」が解説されています。

 

 

この調査ではまず、「非常に幸福」と答えた人々の割合が、ヨーロッパ西部では増えているのが特徴です。

 

 

もう一つ、「脱物質主義」の方向青年たちの精神は変容してきています。

 

 

また、家庭で子どもに身につけさせる上で大切だと思うもの、という問いに対しては、以下のような価値が大切だと回答する人が増大しています。

 

 

◆ 寛容と他者の尊重

 

◆ 利己的でないこと

 

◆ 仕事にはげむ

 

◆ 決断力・ねばり強さ

 

 

 

この本の最後に、連鎖反応による爆発力について述べられています。自由と魅力性による解放で、変革が進みましたが、一つの細胞から、充実の連鎖反応によって全体が大きく開くのだ、と著者は言います。

 

 

あなたも本書を読んで、「現代社会はどこへ向かうのか」を考察してみませんか。

 

 

 

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では、今日もハッピーな1日を

 

 

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