日本社会で長らくタブー視されてきた「外国人問題」。しかし人口減少と労働力不足が深刻化する今、もはや避けては通れない “国家の根幹テーマ” となった――その実態をデータと実証で読み解く本があります。
本日紹介するのは、1964年東京生まれ、大手メーカー勤務を経てリクルートエイブリック(現・リクルートエージェント)へ、新規事業・人事制度設計に携わり、その後リクルートワークス研究所「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社サッチモを創業、『エンゼルバンク――ドラゴン桜外伝』の主人公モデルとしても知られ、近著『静かな退職という働き方』が話題となっている海老原嗣生さんが書いた、こちらの書籍です。
海老原嗣生『外国人急増、日本はどうなる?』(PHP新書)
この本は、極端な排外論でも、性急な受け入れ論でもない──“理性と戦略で考える” 外国人政策の全体像を提示した一冊です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.やばい!危ない!でも人手が足りない
2.あなたの身の回りの外国人は危ない人なのか?
3.日本人だけでやってこれたから、今後も大丈夫?
4.企業は外国人を低賃金で酷使し、儲けているのか?
5.外国人材戦略が大金を生み「世界制覇」を狙える!
本書の前半では、外国人受け入れをめぐる “誤解” と “現実” をデータで可視化します。多くの人が抱きがちな不安が、いかに誤ったイメージに基づくかを冷静に説明している点が特徴的です。印象的なポイントは以下の通りです。
◆ クローズアップされる不法在留者は全体のわずか2%
◆ 本質は“正規在留外国人98%”をどう位置づけるか
◆ 労働人口100万人減という日本の現実はすでに目前
◆ 治安悪化はデータで見ると「外国人要因ではない」
◆ 感情論ではなく、人口・経済データから議論すべき
この本の中盤では、日本人だけで社会を維持できるのか、企業が外国人を安い労働力として搾取しているのか──といった社会の誤解を丁寧に検証し、“共生” の現実的な姿を提示します。主なポイントは次の通りです。
◆ 日本人だけでは社会維持が不可能な時代に入っている
◆ 外国人労働が賃金を下げるという通念は一面的
◆ “技能実習”が問題なのは制度の歪みと運用ミス
◆ 外国人との共生拒否は、将来の“国際的孤立”を招く
◆ 日本で働いた外国人が“親日ネットワーク”を形成し得る
本書の後半では、外国人材を「守り」ではなく「攻め」の国家戦略として活用する視点が示されます。外交・経済・安全保障に直結する重要テーマで、未来志向の視座が際立っています。
◆ 世界に散らばる“親日派人材”は国家の財産になる
◆ 外国人材がつくるネットワークは外交戦略の武器
◆ 日本語教育は“文化力”でありソフトパワーそのもの
◆ 人口減少国家こそ、外国人材を戦略的に活かすべき
◆ 次の競争力は「人材の国際化」が握る
感情に流されない “事実ベースの議論” が求められる今、本書は外国人政策の議論を一段深くし、未来志向の選択肢を提示する実践的な良書です。排外主義でも、盲目的な受け入れ論でもない──まさに “中庸で合理的な視点” を与えてくれます。
人口減少と国際競争が加速する日本にとって、避けて通れないテーマを考えるうえで必読の一冊として、お薦めします。
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では、今日もハッピーな1日を!【3927日目】








