「定年を迎えた高齢者が新しい環境に順応するのは容易ではない。とはいえ、日本で独身生活を送っていたが、現在は若いフィリピン人妻を持ち、温かい家庭に恵まれて暮らしている人もいる。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、1975年三重県生まれ、上智大学外国語学部卒業後、カメラマン、フィリピンでの新聞記者などを経てフリーになったノンフィクションライターの水谷竹秀さんが書いた、こちらの書籍です。
水谷竹秀『脱出老人 フィリピン移住に最後の人生を賭ける日本人たち』(小学館文庫)
この本は、日本で老後を送るよりは幾分、幸せな生活を過ごすことができるだろうと、次々に日本脱出を果たした「脱出老人」がこれまで積み重ねてきた人生の襞に触れ、海外移住に至ったドラマを紹介し、「自分らしく生きるとはどういうことか、幸せとは何か」という万国共通の問いに対して、著者なりの解を見つけ出そうとしている書です。
本書は以下の7部構成から成っています。
1.寂しさからの脱出
2.借金からの脱出
3.閉塞感からの脱出
4.北国からの脱出
5.ゴミ屋敷からの脱出
6.介護疲れからの脱出
7.美しい島へ
この本の冒頭で著者は、「一方で夢破れ、帰国した年金生活者も少なくない。そこには『極上』という美辞麗句だけでは語れない現実が潜んでいる。」と述べています。
本書の前半では、「寂しさからの脱出」および「借金からの脱出」ついて以下のポイントを説明しています。
◆ 単身の老後の寂しさからフィリピンで家族を持つ
◆ 年の差婚を肯定的にとらえるフィリピンの傾向
◆ フィリピン人妻の家族にお金をつぎ込んで貧困に陥る高齢者
◆ 細かいことを気にしないのが歳の差婚の秘訣
◆ 日本での借金から逃れ、フィリピン妻の家族とスラム街に住む日本人高齢者
◆ 貧乏は糖尿病に勝つ
◆ フィリピン人の貧困は負の連鎖
◆ お金がないと病院にも行けない
この本の中盤では、「閉塞感からの脱出」「北国からの脱出」および「ゴミ屋敷からの脱出」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 1986年に通産省が打ち出してとん挫した「シルバーコロンビア計画」
◆ 年金生活者のバイブル『マニラ極楽暮らし』(小松崎憲子著・マガジンハウス)
◆ 編集担当の戸田智弘著『老後をアジアリゾートで暮らす』(双葉社)
◆ ロングステイ財団の人気調査:①マレーシア、②タイ、③ハワイで、フィリピンは5位
◆ 東北地方の雪かきを逃れてフィリピンで越冬、わたり鳥のような生活
◆ 原発のないフィリピンへ移住
◆ ゴミ屋敷や孤独死のリスクを抱えるUR都市機構の団地に住む高齢者
◆ セブ島の介護施設はスタッフが親切で日本へは戻らない
本書の後半では、「介護疲れからの脱出」および「美しい島へ」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 介護疲れからフィリピンの施設へ
◆ 海外での闘病生活
◆ 日本の国民健康保険に加入していないリスク
◆ フィリピン退職者ビザの落とし穴は相続
この本の締めくくりとして著者は、「フィリピンに移住する日本人たちの姿を通して、高齢者の幸福論を考えるのがこの取材のテーマであった。結論から先に申し上げると、幸せになる人もいるし、そうではない人もいる。」と述べています。
さらに、「ただし、フィリピンでの取材を通じてこうは言える。日本でそのまま暮らしたら寂しい老後を送っていた可能性の高い高齢者たちが、フィリピンに来たから幸せになった、という事実だ。」と続けています。
あなたも本書を読んで、フィリピンをはじめとする海外移住の選択肢について、そのメリットとデメリットを冷静に考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3507日目】