「ネットがここまで普及した今、テレビの存在感が年々薄れている」、「テレビ自身が変わっていくことを怠れば、この先間違いなく “ 殺されていく ” でしょう。」と指摘している本があります。
本日は、NTTドコモで松永真理さんらとともに「i モード」を立ち上げ、さらに「おサイフケータイ」をはじめとするドコモの新規事業を企画・実践し、現在は慶應義塾大学特別招聘教授のほか、多数の企業で取締役を兼任している夏野剛さんが書いた、こちらの書籍です。
夏野剛『誰がテレビを殺すのか』(角川新書)
この本は、現在のテレビ業界が抱えている問題やそれをクリアするための方策、そして未来について語っている書です。
本書は以下の5部構成から成っています。
1.おそるべきネットの発展
2.5Gの誕生が私たちにもたらすこと
3.テレビの息の根を止めるもの
4.テレビに何が起きているのか?
5.テレビの未来2025
この本の冒頭で著者は、ネットフリックスやAmazonが運営するプライムビデオが日本に上陸してからというもの、計り知れない衝撃を私たちや既存メディアに与え続けています、と述べています。
テレビを脅かす存在としては、2005年以降、以下のようなネット業界の台頭がありました。
◆ YouTubeの正式サービス開始
◆ ニコニコ動画のスタート
◆ i Phone をはじめとするスマートフォンの登場
◆ 女性向け動画メディアサイト・C CHANNELの立ち上げ
◆ AbemaTVがスタート
2014年時点で、ネット広告売上額は1兆円を超える規模になりましたが、テレビの広告収入は下げ止まり、ネットとの共存化が定着している、と著者は言います。
その後、ネットフリックスが毎月定額課金のビジネスモデルで、豊富なコンテンツ制作資金を確保し、ハリウッド級の良質な独自コンテンツを提供していることを紹介しています。
日本でいえば、この毎月定額課金モデルはNHKで、不安定な広告収入に依存しない課金モデルなので、民放各社にはできないようなスケールの大きいコンテンツを数多く制作しています。
この後本書では、5Gの誕生による高速通信インフラが与えるインパクトや、ネットリテラシーが次第に必要なくなってくる、という予測を述べています。
この本の中盤で、スマホの急速な普及により、テレビとの「時間の奪い合い」が起こっていると著者は指摘しています。
また、テレビを主に視聴している層が、60代・70代になっていることを踏まえ、テレビ放送各局は、そうした年代の人々が喜ぶコンテンツに傾いている、ということです。例えば、次のような内容です。
◆ 「左翼的・反権力=知性」と思い込んでいる主張(全共闘世代)
◆ 「大企業・官僚=悪」というイメージの報道
◆ 政権にとって好ましくない報道(加計問題など)
◆ 芸能人・有名人の不倫問題、金銭トラブル
◆ 「成功している人=悪い人」のイメージに合う番組
彼らはテレビ視聴者として、自分には必要とされる場も仕事もなく暇を持て余しているという、やっかみが、60代・70代でも活躍している政治家、経営者、医師、弁護士などに向けられている、と著者は指摘しています。
とくに、そうしたマーケティングをしている象徴的なメディアが朝日新聞で、反権力を叫んで、やっかみを持った60代・70代の視聴者層が喜ぶようなコンテンツを配信し続けているのです。
続けて著者の夏野さんは、ネットフリックスのような新しいメディアが、テレビ局のようなドラマやドキュメンタリーなどいいコンテンツを作り続けていくと、テレビ局はなくなる運命にある、と予測しています。
但し、コンテンツを作り、それを商品として売るというビジネスは残るので、テレビ局はエンターテイメント制作集団、コンテンツ制作集団への脱皮を求められるでしょう。
この本の後半では、総務省の保守的な行政や、2025年という未来を見据えたテレビのコンテンツ作りについて、予測を記しています。
とくに注目しているのは、2015年時点で70代だった人たちが80代に入り、メインの視聴者である60代・70代から外れ、存在感が薄くなることです。
そうすると、現在のような反権力・リベラルな内容のコンテンツでは視聴率が取れなくなります。すでに世界は、ネットフリックスの影響もあり、優良なコンテンツがネット配信される潮流になっており、日本のテレビは世界から孤立しつつあります。
最後に本書では、テレビ関係者に求められることとして、自分たちが作るコンテンツの価値の見直しを訴えています。
LTV(ライフタイムバリュー)という「顧客生涯価値」をいかに高めていくかが、今後の大きな課題となってくるでしょう。
あなたもこの本を読んで、これからのテレビやメディアの未来について考えてみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を