書評ブログ

『ビジネス安全保障 経済・暮らし・サイバー空間でいま起きていること』

「あなたの会社も、あなたの暮らしも、すでに戦場にある」――そんな衝撃的な現実を突きつける一冊があります。

本日紹介するのは、サイバー攻撃からサプライチェーン、さらには私たちの日常生活に至るまで、あらゆる分野に広がる “安全保障の最前線” を日経新聞記者が徹底取材した話題作です。

日本経済新聞社 編『ビジネス安全保障 経済・暮らし・サイバー空間でいま起きていること』(日経プレミアシリーズ)


いま、国家の安全保障「軍事」だけでなく「ビジネス」「経済」「生活」「デジタル空間」など、あらゆる領域と直結しています。
企業の情報漏えい、経済インフラの脆弱性、そしてSNS上の偽情報拡散まで――これらすべてが、現代の “戦争” の一部です。

日本経済新聞社は、各分野の専門記者が総力を挙げ、企業経営者、技術者、官僚、研究者などの証言を集め、「ビジネス安全保障」という新しい枠組みを浮き彫りにしました。

本書は以下の4部構成から成っています。

1.企業情報を守る安全保障

2.企業経営を守る安全保障

3.暮らしを守る安全保障

4.経済・外交を守る安全保障


本書の前半では、「企業情報を守る安全保障」をテーマに、サイバー攻撃の実態と政府・自治体・企業の対応を解き明かしています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 海底ケーブルへの盗聴リスクと各国の防御体制

◆ 「能動的サイバー防御」導入で日本はどう変わるのか

◆ 横須賀市が挑む“サイバータウン”構想

◆ 2025年施行予定の「セキュリティー・クリアランス制度」と企業への影響

◆ 産業スパイ天国と化した日本が直面する情報リスク


この本の中盤では、「企業経営を守る安全保障」および「暮らしを守る安全保障」を中心に、経済・医療・食料など日常に潜む危機を浮かび上がらせます。主なポイントは次の通りです。

◆ 経営者が直面する“安保コンサル”という新ビジネスの台頭

◆ 「防衛ユニコーン」を育てる新しい産業政策

◆ 医療・薬品・農業など“命の基盤”を支えるサプライチェーンの脆弱性

◆ 健康アプリやフードテック分野に潜む「データ収集と知財リスク」

◆ 「ビジネスと人権」への対応が新しい企業価値の分かれ目


本書の後半では、「経済・外交を守る安全保障」として、国家間の駆け引きや国際的なパワーバランスをビジネス視点で分析しています。主なポイントは以下の通りです。

◆ 経済安全保障とは何か――日本企業が抱える “アキレス腱”

◆ 防衛産業をめぐる“特需”と円安のリスク

◆ 台湾有事と沖縄経済の連動リスク

◆ 中国支援のハッカー集団「ボルト・タイフーン」の脅威

◆ 「デュアルユース(軍民両用)」に秘められた新しい商機


本書の魅力は、「安全保障」を抽象的な国家戦略ではなく、企業の経営課題として具体的に描いている点にあります。
また、日常の暮らしの中で何が “リスク” になっているのかを、最新の取材データでわかりやすく提示しています。

サプライチェーンの再構築、サイバー防衛、情報の信頼性、人権と倫理――。
これからの経営者・ビジネスパーソンにとって、「安全保障を理解すること」が最大の競争力になる時代が到来したことを、この本は明確に教えてくれます。

ビジネスと暮らしを守るために、私たち一人ひとりが “安全保障の当事者” であることを自覚し、何をすべきかを考えさせられる必読の一冊です。


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では、今日もハッピーな1日を!【3886日目】