「大規模なカルテデータ分析によって、保険医療費の約1割を占める生活習慣病の医療費が、有効に利用されていないことを実証する結果となった。」と述べている本があります。
本日紹介するのは、交換留学生としてトルコ、ドイツ、スイスに1年間留学、1974年慶応義塾大学工学部卒、管理工学科修士、ボストンコンサルティンググループ入社、世界の企業の経営戦略立案を担い、1984年油井コンサルティングを設立して代表となり、現在は、アライドメディカル取締役の油井敬道さんが書いた、こちらの書籍です。
油井敬道『ビッグデータが明かす医療費のカラクリ』(日経プレミアシリーズ)
この本は、25年間、61万5000人の生活習慣病患者、1350万回受診の実際の電子カルテデータの統計解析をもとに、医療費の使われ方を検証した書です。
本書は以下の10部構成から成っています。
1.同じ病気でも、医療費はずいぶん違う
2.高い治療のほうが治療成績は良いのか
3.生活習慣病医療費の中身を見る
4.薬の効果とは、どういうものか
5.高い薬と安い薬で、効き目は異なるのか
6.医師はどのようにして薬を選んでいるのか
7.診療の頻度で治療結果は変わるのか
8.生活習慣病に高額の治療費はいらない
9.薬や医療の善し悪しはなぜ公表されないのか
10.患者と保険者の行動が医療を変える
この本の冒頭で著者は、「本書は、医療保険によって支払われている医療費が、規制と自由競争が絡み合った環境の下でどのように決まるのか、医療費が決まるシステムとそのカラクリを理解し、考えていくものである。」と述べています。
本書の前半では、「同じ病気でも、医療費はずいぶん違う」「高い治療のほうが治療成績は良いのか」および「生活習慣病医療費の中身を見る」ついて以下のポイントを説明しています。
◆ 心筋梗塞や脳卒中など重い病気がエンドポイント
◆ 同じ生活習慣病でも患者によって3~5倍違う治療費
◆ 治療の効果はエンドポイントで見る
◆ 薬局の手数料は処方日数が長いほど下がる
◆ 病院の手数料も診療間隔が長いと極めて安くなる
この本の中盤では、「薬の効果とは、どういうものか」「高い薬と安い薬で、効き目は異なるのか」「医師はどのようにして薬を選んでいるのか」および「診療の頻度で治療結果は変わるのか」について解説しています。主なポイントは次の通りです。
◆ 血圧が下がるかどうかは、本当のエンドポイントではない
◆ 同じ属性を持つ患者同士で比較する
◆ 医師は製薬メーカーの影響を受けやすい
◆ 診療頻度と処方日数はほぼ同じもの
◆ 生存曲線による比較
本書の後半では、「生活習慣病に高額の治療費はいらない」「薬や医療の善し悪しはなぜ公表されないのか」および「患者と保険者の行動が医療を変える」ついて説明しています。主なポイントは以下の通りです。
◆ 治療当初は薬の処方日数は短くなる
◆ ビッグデータ活用の努力は道半ば
◆ 医療の世界では患者が市場形成に関与できない
◆ 情報の非対称性の問題
◆ 現在の健康保険制度の下で市場機能を働かせる
この本の締めくくりとして著者は、「本書は電子カルテのビッグデータ分析により、広く国民に、我が国の医療実態、カラクリを理解してもらい、行動のキッカケにしてもらうために執筆したものである。」と述べています。
あなたも本書を読んで、ビッグデータが明かす「医療費のカラクリ」を理解し、受診する際の選択・判断に活かしていきませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【3523日目】