55歳の時に部長職を解かれ後進に道を譲る役職定年を迎え、仕事へのモチベーションが急低下して会社に行くことに苦痛さえ覚えるようになった著者が、早期希望退職者の募集に応募して、具体的なビジョンを持たないまま、シニアライフに突入した辛い経験と、いかにして「生きがい難民」からの脱出の闘いをしてきたかを記した記録の書があります。
本日紹介するのは、1950年生まれ、大学卒業後、大手エンターテインメント会社に勤務、58歳の時に早期退職し、キャリアカウンセラー(現・国家資格キャリアコンサルタント)の視覚を取得、さらにシニアライフアドバイザー資格を取得して、中高年のキャリアコンサルタント、シニア層のライフプランセミナーの講師を務める原沢修一さんが書いた、こちらの書籍です。
原沢修一『あゝ定年かぁ・クライシス 男のロマン 女の不満』(ボイジャー)
この本は、これからのシニアに定年後の生き方を示唆した書です。
本書は以下の11部構成から成っています。
1.まえがき
2.こころの定年
3.自由という名の「男のロマン」
4.人生を変えた1枚のチラシ
5.偶然の妙味
6.生きがいはどこに
7.行動・偶然・チャンスもサイクルを起こす
8.妻の元気のもと「亭主元気で留守がいい」
9.女の不満のメカニズム
10.結局二人で生きていく
11.あとがき
この本の冒頭で著者は、「目標もなく、日々やることのない人を『生きがい難民』という。つまり『キョウヨウ』と『キョウイク』のない人のことをいう。」と述べています。
もちろん「教養」「教育」のことではなく、「今日、用がない」「今日、行くところがない」人のことを指しています。
そして「生きがい難民」には次の2種類がある、と著者は説明しています。
◆ 生きがい難民予備軍: 何かしたいが何をしていいか分からず、悶々としてキッカケ待ちの人
◆ 生きがい難民認定者: 完全な引きこもりで、認知症まっしぐらに見える人
著者の原沢さんは前者の「生きがい難民予備軍」だったのでまだ救いようがあったのかもしれない、と述懐しています。
本書の前半では、「こころの定年」および「自由という名の男のロマン」について、以下のポイントを提示しています。
◆ 目標は「望む力がどれほどのものか」が試される
◆ 平穏なシニアライフを過ごすためには妻の存在は大きい
◆ 13年習い続けてきた「陶芸」の趣味を活かしたコミュニティづくりの夢を断念
◆ リタイア後の人生における大前研一氏の6つの提言
➀ 50歳になったら定年後のことを考える
② 人生でやりたいことを20個リストアップする
③ 家出すること10個、家の外ですること10個
④ そのうち一人ですること5個、仲間とすること5個
⑤ ポイントは仲間とすること
⑥ 独りにならないことを考えておくことが大切
◆ 妻や家族に対しては、見返りを求めない
◆ ボランティアや社会貢献は、感謝の言葉「ありがとう」がなくても失望しない
◆ 趣味は、楽しさ・充実感・達成感が自分へのご褒美
◆ 学習は、新たな発見・知識が自分への満足感
◆ リタイア後はあり余る時間との闘い
◆ 妻の「亭主在宅ストレス症候群」(=父源病)
◆ 自分の居場所がわからない
この本の中盤では、「人生を変えた1枚のチラシ」、「偶然の妙味」、「生きがいはどこに」および「行動・偶然・チャンスもサイクルを起こす」ことについて著者の体験をもとに解説しています。主なポイントは次の通り。
◆ キャリアカウンセラーと講師デビューに達成感
◆ 偶然が引き起こした化学反応
◆ 異質な経験と緊張感の大切さ
◆ 生きがいは意外なところに
◆ 行動・偶然・チャンスの循環法則
◆「感謝される」ことより「感謝すること」
◆「点」から「線」そして「面」へ
◆ シニアライフを生き生きと送る人たちの「5つの共通点」
➀ 社会と関わっている
② 志や目的を共にする仲間が存在する
③ 継続的な役割を持ち自分の存在が認められている
④ NPOやボランティアなど社会貢献をしている
⑤ 自分の仕事を持っている
本書の後半では、「妻の元気のもと『亭主元気で留守がいい』」、「女の不満のメカニズム」および「結局二人で生きていく」ことについて考察しています。主なポイントは以下の通りです。
◆「男のロマン」に対して、とめどなく出てくる「女の不満」
◆ 家事のイロハを教えてもらうことと役割の再構築
◆ 夫が家にいることの一番の不満は「自分の時間」が制限され、減ってしまうこと
◆ 男のたて社会(会社)と女のよこ社会(地域)
◆ 熟年離婚を回避するカギは「聴く力」
◆ 感謝の言葉、労いの言葉がコミュニケーションを円滑にする
◆ 定年退職した男性を揶揄する「濡れ落ち葉」「粗大ごみ」「産業廃棄物」
◆ 自立への第一歩は、見栄・意地・プライドを抑え、「家事力」をつけること
このあとには「生きがい探し法則20」および「夫婦のリフォーム教訓20」が掲載されていて参考になります。詳細はぜひ本書を手に取ってご参照ください。
あとがきとして著者は、「妻のはやり病」および「夫のはやり病」を以下の通り紹介しています。
◆ 亭主元気で留守がいい症候群
◆ 亭主在宅ストレス症候群
◆ 主婦定年願望症候群
◆ 察してほしい症候群
◆ 男のロマン症候群
◆ 見え・意地・プライド執着症候群
◆ 自己承認欲求症候群
◆ かまってほしい症候群
◆ やった感症候群
この本との出会いは、最近読んだ金澤美冬さんの著書『おじさんの定年前の準備、定年後のスタート ~ 今こそプロティアン・ライフキャリア実践! ~』(総合法令出版)に紹介されていたからでした。こちらの本もとてもいい本でお薦めです。
同書には新刊の拙著『定年ひとり起業』(自由国民社)も紹介されていて、併せて読んでいただくと、定年前後のシニアライフを生き生きと過ごすヒントが満載です。
本書の巻末に掲載されている「解説」は、一般社団法人 日本元気シニア総研創始者の富田真司さんが書かれていて、「ホワイトカラーの定年後シニアの生き方の気づき、ヒントが満載!」と称賛しています。
富田さんがとくに奨めるこの本の3つの視点は以下の通りです。
◆ リアルシニアと同じ目線で書かれ、シニアの生の声が生かされていること
◆ シニアが元気になるための気づきのヒントが満載されていること
◆ 今、シニアが何をすべきか的確に示していること
さらに、「50代後半に読んでほしい、今から準備すれば間に合う」「シニアの生きがいづくりが最重要課題である」と提唱し、最後に「シニアの心得」を46項目にわたって掲載していて参考になります。
あなたも本書を読んで、お金や健康だけではない、必ずやって来る「定年後の二つの壁」である「男のロマン」および「女の不満」を知り、定年後「アクティブシニア」として活躍してみませんか。
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では、今日もハッピーな1日を!【2613日目】