クレイトン・クリステンセンはハーバード・ビジネススクール教授を勤め、先頃退官した。初の著作だった『イノベーションのジレンマ』で、破壊的イノベーション理論を確立して大きな反響を呼んだ。
今や、企業のイノベーション研究における第一人者だ。経済理論におけるイノベーション理論はシュンペーターが確立したが、実践分野においてそれを発展させ、イノベーション理論の後継者と言えるのがクリステンセンだろう。
本書は、退官前にクリステンセンが手掛けた最後の大きな研究成果を本にしたものだ。企業経営においてイノベーションを起こした経営者には共通のDNAがある、として、その特質を整理して提示した。
アップル創業者のスティーブ・ジョブズ、アマゾン・ドットコムCEOのジェフ・ベゾス、P&G前会長のアラン・ラフリーを初めとする世界を代表する革新的な経営者25人と3,500人を超える起業家に8年間にわたる調査を実施した。
結論は、イノベーターには次の5つの際立った特質があるということだ。
1.質問力 (常識に抗う質問をたえず行い、世界を変えることに快感を覚える)
2.観察力 (潜在顧客の観察により非凡なビジネス・アイデアを生み出す)
3.人脈力 (異なる専門・業界から多様な視点・アイデアを吸収する)
4.実験力 (仮説を立て、すぐに新製品やプロセス探求の検証を行う)
5.関連づける力 (以上の行動結果から得られたものを関連づけて独創的なビジネスを発見する)
イノベーターのDNAをチームや組織で育てるには、①人材(People)、②プロセス(Process)、③企業哲学(Phirosophy)の3Pを重視することが不可欠だ、というのが著者の主張だ。至極、名言であろう。
これからの変化の激しくグローバル化するビジネス環境の中で、イノベーションによって成長を続ける上で、すべての経営者、経営幹部には必読の書だ。強く推薦したい。