野口嘉則氏は、リクルートへ入社後、メンタルマネジメントの講師として独立した。その後、コーチングのプロとしての活動を始め、EQコーチングの第一人者となった。
本書は、「本当の自分に目覚める話」 として、自分の人生の考え方、生き方について述べた書です。人生は生まれた時から、多くの人々の世話になり、その後は成長して自立して生きるようになる。
しかしながら、誰でも 「老い」 という、失っていくプロセス、いろいろなことができなくてっていくフェーズを迎えることになる。それを著者は、「引き算」 と呼んでいる。
人間は、生まれた時から死ぬ時まで、実は周りの多くの人の世話や助けによって生かされている、ということに気付かねばならない。
著者の野口氏は、それに気付いたため、以下の2つのことを行うことで、恩返しをしていこうと考えたそうだ。
1.共感
2.感謝
人間はこの2つを行うことにより、周りの人々に、社会に、地球に、宇宙に恩返しをしていける、ということだ。そして人間というものは、誰かの心と自分の心がつながったとき、誰かの命と自分の命が響きあったときに、幸せを感じるものだ。
そうした理由から、著者は自分にできる最大の恩返しとして、心から共感と感謝をしていくことにした、という。そして、こうしたことに気付けたのは「老い」のおかげだ、ということだ。
本書の最後には、愛する人との別れ、すなわち究極の「引き算」について記されている。自分の妻が夫である自分を死亡によって失ってしまう様が描かれている。
そして、『老子』 の教えが述べられる。本当に大切なものを本当に大切にして生きていくためには、余計なものを意図的に引き算していって、本当に大切なものに心のエネルギーを向ける必要がある。
また、我が国特有の 「引き算の美学」 が紹介されている。それは、「余計なものをどんどん引き算していくことによって、本格的なエッセンスを浮かび上がらせる」 ということだ。
自分にとって何が最も大切なのか、あなたは何に価値を置き、何をよりどころにして生きるのか、それが 「引き算の美学」 の実践だ。
本書は全ての人々の生きかたに対して、多くの示唆を与えてくれる書となるだろう。心から推薦したい。