野中郁次郎氏は、米国で高く評価された『知識創造企業』(東洋経済新報社)で、経営学の分野で第一人者の仲間入りをし、「日本のドラッカー」と称される。
本書は、約70年前にあった大東亜戦争時の日本軍の組織論を分析した本だ。なぜ日本が負けたのかを国力の差ではなく、作戦や組織による「戦い方」の視点から解説している。
大東亜戦争時の日本軍は初期の快進撃から一転、守勢に回った後は、「これまでの戦闘方法が通用しない」状態に混乱し、突破口を見つけられずに敗戦を迎えた。
「想定外変化」に対する組織だけが生き残れるという意味で、「失敗の本質」 が描く日本軍の組織分析は示唆に富む。
現在、まさに 「想定外」の連続する世界経済の中で、日本企業が変化に対応できずに競争力を失っていく姿は、当時の日本軍とまったく同様の 「組織の弱点」 を露呈していると言えなくもない。
日本軍も日本企業も「転換点」に弱く、それは日本人の思考と日本の組織特有の弱点が、転換点で急速に露呈するためであろう。それは以下の7点に集約できる。
1.戦略性 (大きく考えることが苦手)
2.思考法 (革新が苦手で練磨が得意)
3.イノベーション (ルールを作ることが苦手)
4.型の重視 (創造ではなく方法)
5.組織運営 (現場活用が苦手)
6.リーダーシップ (環境変化への対応が苦手)
7.メンタリティ (空気の支配とリスク管理の欠如)
日本のみならず、米国をはじめ世界の経営者から絶大な支持を受ける本書の分析は、組織のリーダーにとって極めて有益だろう。すべての経営者、経営幹部に一読を強く薦めたい。