落合博満氏は、プロ野球の異端児、「オレ流」を選手時代も監督時代も通して、且つ、結果を残した。選手としては三冠王3度、監督としても中日ドラゴンズを日本一に導いた。
本書は、落合氏の勝負哲学を一般化して、ビジネスにも応用できる形でまとめた本で、とても参考になる。指揮官は孤独であり、どんな周囲からの批判や雑音を浴びせられても、それにひるまず勝つことに拘るべき、と説いている。
プロ野球は、観客あってのものであり、入場料やTV放映権で選手や球団が食べているのだからファン・サービスを意識しなければならないと、落合氏は監督時代につねに言われてきた。
実際に、落合の野球は面白くないし、勝利監督インタビューでもリップ・サービスがなく、そっけない。いわゆる 「絵」にならないということで、話題を提供できないのだ。買っても面白くない、観客も一向に増えない、ということだ。
本書で落合氏が強調しているのは、才能を発掘して伸ばす、ということだ。選手の自主性に任せる、ほめてやる気にさせるなど、従来の根性野球とは趣を異にする。その辺が野球界の先輩から人気がない理由だ。
それでも落合は信念を曲げない。最後は、中日のホームゲームで観客を呼べないということで、成績が好調なのに監督を解任されてしまった。プロ野球は勝ってなんぼだが、それだけではなく、客を呼べてなんぼでもあるのだ。
本書で落合氏が指摘する若手を成長させる手腕は、ビジネスでも大いに役立つ内容だ。結果を出す落合氏の哲学の真髄に迫る本書をぜひ一読いただきたい。