本書の共著者である荻野氏と大宮氏はともにフリーのジャーナリストで、それぞれリクルートやファーストリテイリング(ユニクロ)でビジネスマンとして働いた経験を持っている。
本書は、『ダブルキャリア』 というタイトルの通り、「二足のわらじのすすめ」だ。サラリーマンをやりながら単なる小遣い稼ぎの副業や内職をすることではなく、「キャリアとしての副業」をコンセプトにしている。
それは、景気や会社の都合に左右されない、自分なりの確固たるキャリアを作る方法、ということだ。「自分らしいキャリアを作る」 というと、転職や起業を思い浮かべる人が多いだろう。
しかし、いきなり会社を飛び出すのはリスクが大きすぎる。そこで、本業と合わせて、副業という、もうひとつのキャリアを持つことを本書では提唱している。
本書では、以下の5部構成にて、「ダブルキャリアのすすめ」を説いている。
1.ダブルキャリアを模索する人たち
2.なぜ 「2つのキャリア」 なのか
3.副業の歴史と法律
4.ダブルキャリアと会社の関係
5.ダブルキャリア実践 8つのステップ
本書で薦める「ダブルキャリア」について、最後に分かりやすい例えが記されているので紹介したい。それは学習塾のコンサルタントが、「いい塾の先生とはどんな先生か」について話した事例だ。
いい塾の先生の条件を挙げよ、と言われれば通常、次のような先生を指す場合が多いだろう。
1.子どもによくなつかれる先生
2.子どもの意識を逸らさない授業をする先生
3.子どもの理解不足を解消してくれる先生
いずれも違うとコンサルタントは言う。それは必要条件ではあるが、必要十分ではない。塾が存在する目的は、「テストの点数を上げること」なので、子どものテストの点数を上げねば十分とは言えない。
テストでは、塾の授業で習ったことがそのまま出るわけではなく、応用問題や速く解く練習など、自学自習が欠かせない。したがって正解は、いい塾の先生とは、「家に帰って勉強したくなるような授業をする」先生だ。
この本も全く同じコンセプトで書いたものだ、と著者はいう。やりたい仕事がある。これをテストとしよう。それならば、いつまでも授業(=その仕事に就くための勉強や情報収集)を受けているだけではダメだ。
自分の力で実際の問題を解いてみる(=その仕事を副業として始めてみる)のが一番、ということだ。失敗しても、本業を持ったままならリスクもないし、始めてみて分かる世界がある。
まず第一歩を踏み出さなければ、永遠に何も始まらないということだ。本書では、多くの 「ダブルキャリア」 を実践する人たちが出てくる。将来、起業を目指す人はぜひ本書を手に取ることを薦めたい。