昨日に引き続き、米国のIT産業事情に詳しい立入勝義氏の著書を紹介したい。立入氏は、電子書籍の分野でも先進国である米国の最新動向に詳しい。
2010年は電子書籍元年と言われ、アマゾンのキンドルやアップルの i Pad が華々しくデビューした。この専用端末で電子書籍を読むことが電子書籍の発展にそのまま繋がるという理解は誤解だ、と著者は説く。
それは、電子書籍はあくまでもオンライン上の商品であり、コンテンツとして捉える必要がある、ということだ。つまり、電子出版で売れるコンテンツは紙とは違うと筆者は分析している。
では、電子書籍は果たして出版の市場を拡大させることはできるのだろうか。その答えにたどり着くには以下の留意点を考える必要がある。
1.既存の出版市場よりも電子出版市場が大きくなるのか
2.既存の出版市場を電子出版が乗っ取るのか
3.電子出版ではこれまでの出版で可能ではなかったビジネスモデルとコンテンツが生まれてくるのか
出版業界の人にとっては上記の1と2に関心が高いだろうが、最も大切なのは上記3の視点だと立入氏は述べている。新たな市場を創り出さない限り、出版業界の未来はないだろう。
次に本書では、アマゾンとアップルが黒船となり、日本の電子書籍マーケットも事実上、支配しつつあると述べられている。この2社、とくにキンドルで攻勢をかけるアマゾンは言語やフォントの取り決めなど、ルールの決定権を持っている。
実際に、アマゾン仕様がスタンダードになれば、他の事業者は事実上、そのルールに従わねばならないという制約を受けることになる。
本書の最後には、出版社は生き残れるかという問いと、電子出版の未来について述べられている。結論としては、出版社はコンテンツ次第であるし、電子出版はソーシャルと結びついていくだろう。
米国の最新動向から大胆に未来を予測する本書は興味深い。電子書籍に期待をかけるビジネスパーソンにぜひ薦めたい一冊だ。