書評ブログ

泉嗣彦『医師がすすめるウオーキング』(集英社新書)

泉嗣彦氏は、1943年生まれの医学博士で、社団法人日本ウオーキング協会副会長だ。ウオーキング医科学研究所所長でもあり、医学面で見たウオーキングの効用を提唱している。

 

もともと泉医師は消化器が専門だが、人間ドックを行う職場で働くようになって、生活習慣病を改善していく指導に取り組み始めたのがウオーキングを提唱するキッカケだ。

 

本書では、「ライフスタイル・ウオーキング」という、日常生活の中で無理をせずにウオーキングを習慣として行うことを提案しており、それが生活習慣を改善する最善の方法ということだ。

 

ウオーキングは無理をして行えば続かず、結局は習慣とすることができないため、「あと1,000歩、余分に歩く」 ことを目標とするよう指導している。1,000歩というと、約10分間のウオーキングで、日常生活の中でもそれほど無理をせずに達成できる努力だという。

 

本書では、生活習慣病をチェックする人間ドックの検査数値について、分かりやすく解説している。著者によれば、生活習慣病は通常の4種類に加え2種類を挙げて、以下の計6種類の病気という観点からチェックすべきだ、ということだ。

 

1.肥 満      : BMI (体重kg ÷ 身長m ÷ 身長m) 18~25未満
2.高血圧症    : 血圧 最高 90~139 最低 90未満
3.高脂血症    : 総コレステロール 140~199、中性脂肪(トリグリセライド) 150未満、 HDLコレステロール 40以上
4.糖尿病    : 空腹時血糖 109以下
5.肝機能異常 : GOT 35以下、GPT 35以下、γ-GPT 55以下
6.高尿酸血症 : 尿酸  7以下

 

以上の6種類の病気について、検査値が上記の正常値になっているかどうか、数値の経年変化トレンドが重要だ。

 

泉氏によれば、上記の検査数値は、生活習慣の改善により劇的に良くなるらしい。具体的には食生活の改善とウオーキングによる運動習慣の組み合わせ、ということだ。

 

泉氏はさらに、ライフスタイル・ウオーキングを続けると、生活そのものがウオーキング化する、という。体が軽くなって自然と速く、よく歩く生活になっていく、ということなのだ。それを「日常のウオーキング化」と呼んでいる。

 

本書の後半では、いかにして楽しく、ウオーキングを習慣化するかというヒントがたくさん出ている。また、ウオームアップやクールダウンなど、実戦的なアドバイスもあって心強い。

 

著者の説く「ライフスタイル・ウオーキング」で生活は大きく変わるし、人生も変わるだろう。本格的な超高齢社会に突入している我が国にとって、多くの国民が読むべき良書だと思う。心から推薦したい。