書評ブログ

沼波正太郎『熟年1人起業』(徳間書店)

沼上正太郎氏は、1943年宮城県生まれで、早稲田大学政経学部を卒業後、日興証券、学習研究社、東京教育センターなどを経て、独立起業した。

 

現在は、キャリア開発研究所所長であり、経営コンサルタントとしても活躍している。地元の仙台で、「第1回仙台ビジネスグランプリ」 大賞を受賞したことがキッカケとなって、キャリアカウンセラーとして活動したのが独立した経緯のようだ。

 

本書は、中高年の雇用環境が厳しく、望むような仕事や収入が得られない現状から、「熟年1人起業」を薦める、著者の熱い思いが詰まった書だ。今後は、団塊の世代が65歳を超えて、いよいよ本格的に現役を引く状況になる。

 

本書でいう、雇用や生きがい、社会との繋がりが実感できる仕事や生活を求めるニーズは大きく高まるだろう。まず、本書では「熟年1人起業」を成功させるための 準備として、次の9点を挙げている。

 

1.「起業コンセプト」 の確立
2.「売り」 の確認
3.「商品とサービス」 の絞り込み
4.「顧客のターゲットポジション」 をどこに置くか
5.「身の丈」 からのスタート
6.「八つの収益エンジン」 構築
7.「自分応援団」 の組織化
8.「パートナー」 の選択
9.「起業資金」 をどう集めるか

 

また、「熟年1人起業」のスタートにあたって、以下の7つのステップを紹介している。

 

1.「事業計画書」 の作成
2.「公的支援」 施策の情報収集
3.「資金計画」 の立案
4.「法人」 の登記申請
5.「起業告知」 の戦略
6.「スタッフ&環境」 の確保と整備
7.「支援ネットワーク」 の活用

 

成功のための準備とステップ実務として、良く整理されていて参考になる。そして、沼波氏は、自らのコンサル経験から豊富な事例を熟知しており、そこから得た「熟年1人起業」成功のための「5つの教訓」として、以下の5点を挙げている。

 

1.「在庫」 は置かない
2.「現金商売&前金主義」 に徹する
3.「最小のリスクと最大の利益」を追求
4.「オンリーワン」 を目指せ
5.「社会貢献」 を外さない

 

いずれも、企業にあたっては成否を左右する重要な論点だ。最後に「実践編」として、「熟年1人起業」の数多くの事例が紹介されている。年収が300万円、500万円、700万円など、具体的な実例は大いに参考になる。

 

今後、定年起業や熟年起業を目指す人々にとっては羅針盤にもなる書だ。志ある起業家の卵である全ての方に本書の一読を薦めたい。