書評ブログ

根来秀行『成功する人はなぜ23時に眠るのか』(宣伝会議)

根来秀行氏は、東京大学大学院医学博士課程を修了し、ハーバード大学医学部客員教授、パリ大学医学部客員教授を務めている。根来氏は、日本と米国の両方でビジネスマンの働き方を実感し、その違いを本書で述べている。

 

日本の生産性は主要先進7カ国中最下位で、それはマネジメントに対する意識の違いからく来る。とくにビジネスパーソンの健康意識が高いアメリカでは、健康管理はビジネスプロセスの一つとして定着している。

 

本書では「身体マネジメント」を提唱しており、ポイントは以下の3点だ。

 

1.自身の身体マネジメントを実践する
2.仕事の生産性における、身体マネジメントの重要性を認識する
3.「部下の健康を守る」 という意識を持つ

 

身体マネジメントを具体的に述べると、まずは「加齢を制御する技術」として、「長寿遺伝子」を挙げている。これは、マサチューセッツ工科大学のレオナルド・ガレンテ博士が発見した「サーチュイン」という遺伝子だ。

 

サーチュインという長寿遺伝子は、カロリー制限によって活性化し、酵母菌の寿命が延びることがわかった。長寿遺伝子をオンにする方法には次の3つがある。

 

1.カロリーリストリクション (通称:カロリス、いわゆるカロリー制限))
2.運動
3.レスベラトロール (サプリメントの一種)

 

この中で中心になるのは、カロリーリストリクションだが、①栄養バランスの良い食事を、②1日3食、規則正しく摂り、③食事はゆっくりと時間をかけて、よく噛んで、順番を考えて偏りなく食べること、というのが大切だ。

 

効果的な運動のポイントは以下の3つ。

 

1.週2~7回のレジスタンストレーニング (無酸素運動)
2.週3~7回のウォーキング (有酸素運動)
3.毎日のストレッチ (柔軟体操)

 

レスベラトロールはアメリカではよく食べられているサプリメントだが、まだ開発途上であり、今後の情報に注意しながら利用するとよい、という。

 

次に、「病気にならない技術」 として「時計遺伝子」について紹介されている。これは「体内時計」にしたがって生活していく、ということだ。具体的には、以下のようなワークスタイル、タイムスケジュールだ。

 

1.朝、目が覚めたらカーテンを開け、日の光を浴びる
2.まず、コップ1杯の水を飲み干す
3.朝食は必須、和食の見直しも
4.朝7時出社で、5時に退社
5.アフター5は明日への活力に
6.自律神経の調整に注意 (交感神経優位と副交感神経優位の切り替えを)
7.夜23時~朝6時のグールデンタイムに睡眠を摂る (7時間睡眠が最も長寿)

 

さらに、カロリーリストリクションによい即材の選び方として、以下のルールを提唱している。

 

1.カラフルな食材を選ぶ
2.玄米・黒糖などの未精製食材を選ぶ
3.新鮮な食材を選び、鮮度の落ちたものは口にしない

 

また、食べ方のルールは以下の3つ。

 

1.腹7分目を心がける
2.食べる時間と順番に気を使う
3.よく噛んで食べる

 

最後に、「睡眠は再生工場」として、質の良い睡眠を、身体マネジメントの基本として、呼びかけている。睡眠には以下の効用がある。

 

1.身体を成長させ、再生させる
2.病気を治し、免疫力を高める
3.体内の老廃物を排除する
4.酵素を作りだし、エネルギーを貯える
5.脳と精神のメンテナンスを行う

 

以上の観点から、①就寝前のアルコール&カフェイン、②就寝前のパソコン&携帯画面、③就寝前の食事&空腹、の3つを戒めている。

 

本書に記されている原則やルールは、最新医学の研究成果を踏まえた科学的なものばかりで、実践している私の体験からも説得力があり、納得するものばかりだ。

 

健康で長寿の人生を切望するビジネスパーソンにはぜひ読んでもらいたい良書だ。