「起業だ、経営だと肩ひじ張るより、最初からブランドをつくればうまくいく」と説く人がいます。小さな会社のブランド戦略を手掛けるコンサルタントで、スターブランド社の共同経営者の村尾隆介さんです。
そこで今日紹介するのは村尾さんが2008年に書いたこちらの本です。
村尾隆介『小さな会社のブランド戦略』(PHP研究所)
この本は、スモールビジネスの時代が到来したことを背景に、「ブランド戦略」を軸にして、いかに「輝ける小さな会社」をつくっていくかを説いた書です。
会社のみならず、個人のブランディングや「生き方」と「働き方」にも言及する、起業家には必読の内容です。本書は以下の8部から構成されています。
1.「小さな会社のブランド戦略」の世界
2.今こそ、小さな会社もブランドを目指すとき
3.「小さなブランド」と呼ばれる会社たち
4.「生き方」と「働き方」が一致している人の発想
5.小さな会社をブランドに導くイメージ
6.社長がブランドであること
7.スタッフがブランドであること
8.スモールビジネスが、かっこいい
本書の冒頭で著者の村尾さんは、「ブランドをつくるとはファンをつくること」と説いています。村尾さんのいう「ブランド会社」の定義とは、「あなたのビジネスに関わるすべての人がファンになるような、研ぎ澄まされた経営をしている会社」ということです。
村尾さんは、「ファンを産む」、「ブランドになる」は、小さな会社にとって決して難しいことではない、と言います。ほんの少しの工夫で誰にでも実現可能だそうです。
次に著者は、「ブランドには引力がある」と述べます。例えば、「ブランド」と呼べるくらいに研ぎ澄まされた経営をしている小さな会社には、その会社やお店の場所がどんなに悪くても、お客様がわざわざ向こうから探して来てくれます。
そのような会社は、営業をしなくても、モノやサービスが売れていきます。スタッフも、給料の額や福利厚生などに関係なく、「ここで働かせてください、一度ここで働いでみたかったのです」と、向こうからドアを叩いて来てくれます。
お金についても同じです。値段が多少高くても、お客様は喜んでその額を払ってくれます。また銀行も「ぜひうちでお金を借りてください」と、向こうからやって来ます。
「情報やビジネス・チャンスを含め、経営に必要なものすべてが、向こうから勝手にやってくる」というのが、「ブランド」と呼ばれるような会社の特徴です。つまり、強い「引力」があるのです。
「引力のある会社」と「引力のない会社」の違いはどこにあるのか。それは「ミッション」にあると村尾さんは言います。きわめてシンプルな法則です。
「ミッション」とは、以下のような「会社の使命」、あるいは「事業の存在意義」のことです。
◆ 事業を通じて、業界のこんなところを変えていきたい
◆ 事業を通じて、こういうお客様に喜んでもらいたい
◆ 事業を通じて、こういうお客様の悩みを解決したい
◆ 事業を通じて、社会に存在する、あの問題を解決したい
◆ 事業を通じて、この国を少しでもこう変えていきたい
簡単に言えば、「この指とまれ!」だと、村尾さんは喩えています。会社の使命や事業の存在理由をはっきりさせ、それを分かりやすく(デザインやイメージを含めて)、世間に伝えていくことは、小さな会社のブランディング上、欠かせない重要なプロセスです。
「使命感を持っている会社」や「使命感を持っている経営者」は、実にかっこいいと村尾さんは言います。「何のために働いているか」が明確でブレがないから生き生きと仕事をしています。
ミッションを持って働いている人たちがかっこよく見える理由は、一言でいえば「疲れてない」からです。「向かうべき方向」が明らかで、確実にその目的地に向かっていることが実感できるからでしょう。
「生き方」と「働き方」が一致した、笑顔で仕事を楽しむ経営者を、小さな「ブランド」会社なら実践することができます。誰にとっても「仕事」は人生で最も時間を費やすものです。
「仕事が楽しくない」は「人生が楽しくない」ことになります。だから、「生き方」を考えるときは、「働き方」も一緒に考えなければ本当の意味で幸せにはなれません。「生き方」と「働き方」が一致している人は真に幸せな人です。
またこの本では、「小さなブランド」と呼ばれる会社たちとして、以下の8つの会社が実例として紹介されています。いずれもユニークな「ブランド」会社です。
1.「パンガン島」の専門家 Phangan Traveler co.,ltd ソーンチャイ香世
2.世界のVIPが行列するイタリア田舎の生ハム屋
3.「体育の家庭教師」派遣業・スポーティワン
4.家事代行サービス・株式会社ベアーズ
5.「真っ暗闇の空間」を提供するNPOダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパン
6.「コレジャナイロボ」をつくるザリガニワークス
7.世界シェア100%のモンティ・イゾラ島の網カンパニー
8.日本の開業率10%を目指すビジネスバンク
いずれの会社も小さくて確固とした「ブランド」を構築し、お客様が向こうから次々とやって来る、まさにファンに囲まれ、支持された会社です。
この本を読むと、起業やスモール・ビジネスの経営には、いかに「ブランド」が大切かが分かります。「定年前起業」を目指す方々に「ノマド&ブランディング講座」を提供し、「個人ブランディング」を私が薦める理由もここにあります。
皆さんも、起業の中核に、ぜひ経営者個人や会社の「ブランディング」を学んでみませんか。
では、今日もハッピーな1日を!