小飼弾氏は、中卒の学歴で大検にパスした米国カリフォルニア大学バークレー校に留学するも、家庭の事情で中退となった。
中学生の頃から図書館に籠って大量の本を読み漁る生活を送ってきた。百科事典を読むのが好きで、SF小説や科学関係の専門書まで、読書のジャンルは幅広い。
本書は、そうした小飼氏の読書体験から得た、自分を救うための読書について述べたものだ。家庭内暴力や自宅が全焼するなど、波乱の人生を送ってきた著者が、「立ち直る」 ための読書を熱く語っている。
本書は、以下の5部構成から成っている。
1.だから、僕は本で強くなれた
2.本の読み方を変えれば、自分が変わる
3.本屋を歩けば、見える世界が変わる
4.アウトプットすれば知恵はもっと身につく
5.本当の教養は人生を豊かにする
著者によれば、読書はジャンルや著者を限定してはならない、という。いわゆる「本に読まれる」状態になると、むしろ読書をすることが有害にすらなる。
小飼氏は、つねに批判的な目を持って本に向かう。クリティカル・シンキングの重要性が昨今、叫ばれてるが、著者はずっと以前から批判的な観点を大切にしている、という。
また小飼氏は、ベストセラーよりもロングセラーという主義で、普段本を読まない人達から支持された結果、爆発的に売れたベストセラーというのは、必ずしも質の高い本ではない、と考えている。
本は最初から最後まですべて読むもの、という認識が一般にはされているが、本書ではそうしたことは読書に必須ではない、としている。読書で何より大切なのは、楽しんで読む、ということだ。
ある程度以上の速度で、大量の書物を読んでいくには、全てを読む必要はないし、本から大事なことをキャッチできればそれでいい。
むしろ、本の内容をアウトプットすることで、しっかり身につけることの方が重要だ。また、読む本はきちんと本棚に並べ、つねに眺めることも大切だ。
小飼氏は、本や読書に対する思い入れが格別に強いため、自らの体験から得た極意を強く主張する。参考になることはとても多いが、全ての人に当てはまるものでないことも確かだ。
本書で言うように、私も本書を批判的な観点から読んだ。本書で著者が提唱する「読書のあり方」は、あくまでもひとつのあり方であり、それぞれの人に合った読書法があってよい。
読書や本によって、人生が豊かになることは間違いなく、小飼氏の熱い思いを実感できる本書はぜひ、読んでおきたい一冊だ。すべての本好きの人に推薦したい。