小峰隆夫氏は、東京大学経済学部を卒業後、経済企画庁に入庁し、長官秘書官などを歴任。日本経済研究センター主任研究員、経済企画庁審議官などを経て、法政大学教授となる。
本書は、生粋のエコノミストである著者が、日本の人口構造問題に焦点を当てて切り込んだ先駆的な書だ。日本の人口構造の変化がデフレの主要因だと主張する藻谷浩介著 『デフレの正体』 (角川ONEテーマ21新書)を昨年、紹介したが、本書もほぼ同時期の2010年6月の出版だ。
本書のキーワードは「人口オーナス」、すなわちタイトルにある「人口負荷」ということだ。小峰氏は、日本の人口減少を以下の7つの視点から捉えるべきだとしている。
1.人口予測は相対的に不確実性が小さい
2.人口の変化を示すキーワードは 「人口オーナス」
3.人口は長期的な経済成長に大きく影響する
4.人口オーナスへの対応は正統的な経済政策の考え方で対応すべき
5.人口オーナスへの挑戦は新たな発展の機会
6.年金・医療・介護問題については解決策の議論に加え、いかに実行するかが重要
7.人口オーナス問題は世界的な問題
以上の観点から見て、日本の人口構造の変化は世界でも先頭を走っていて、人口オーナス対応先進国になることが確実だ。日本の人口構造の変化は、以下の3つの特徴を持って進行する。
1.人口総数の減少
2.高齢化の進展
3.少子化の進展
これらの特徴は世界の先進国に共通する変化であり、いずれ中国などの新興国にも急速に波及していく。そういう意味で、世界に先駆けて課題に直面している日本が、いかに解決していくかを世界は固唾をのんで見守っている。
さらに、日本の出生率低下や晩婚化のトレンドが紹介され、少子化の背景や「人口オーナス」の意味へと本書の議論は展開していく。
詳しくは本書をお読みいただくとして、人口ボーナスから人口オーナスへの変化が、経済成長に大きく影響してくることを指摘しているということを述べるにとどめておこう。
解決策として、すぐに効果の出る特効薬はない。女性と高齢者の就業率を高め、労働力人口の急速な減少に歯止めをかけることが急務だ。
移民を増やせばよいという議論が時々出るが、時を経ずしてやがて、アジアも人口オーナスへ突入する。大労働力不足時代はすぐそこまで来ており、日本がいかに対応するか、世界が注目している。
本書は、予測の確実性が高いという意味で、すべてのビジネスパーソンに読んでもらいたい一冊だ。心から推薦したい。