「思考の老化」をいかに防ぐかが、高齢社会において大きな課題になっています。今日は「受験勉強」関連の著書が多い和田秀樹さんのアンチエイジング関係のこちらの書を紹介します。
和田秀樹『「思考の老化」をどう防ぐか』(PHP文庫)
この本は、灘高から東大理Ⅲ(医学部)に進んだ精神科医の和田秀樹さんが、これまでの東大受験や勉強法というテーマから、「アンチエイジング」というテーマに移行しつつある中で書いた書です。
本書の構成は以下の6部構成により成っています。
1.なぜ今、「思考の老化」が問題なのか?
2.思考の老化を加速する「前頭葉の衰え」
3.思考の老化-その典型的症状とは?
4.思考の老化は、今からでも克服できる
5.人生に大きな差がつく「前頭葉思考」
6.前頭葉が活性化する「脳にいい習慣」
著者の和田さんは、「思考を若く保つことができれば、単に職業人生だけでなく、退職後の人生もいろいろと楽しめることが多いし、うつ病予防といったメンタルヘルスにも効果がある」と言います。
本書によれば、「思考の老化」を防ぐには「前頭葉機能」の低下を防ぐことが必要です。「前頭葉機能」のポイントは以下の3つです。
1.意欲と感情のコントロール能力
2.思考のスイッチング
3.クリエイティビティ
和田さんによれば、注意しなければいけないのは、成功者ほど自分の成功パターンに縛られやすい点です。成功体験に縛られてしまって思考が硬直化してしまい、新しいことに手が出せなくなる、ということです。
また、年を取ると一つの考えに凝り固まってしまい、新しいものごとを柔軟に受けられられなくなります。意欲と感情のコントロール、思考のスイッチングができないのです。実は、「熟年離婚」の原因も、こうした「考え無精」にあるのではないか、と著者は言います。
40代から50代になると、前頭葉の機能低下に神経伝達物質(セロトニンなど)の減少が加わり、「人生の曲がり角」に直面します。
何も考えずに結論を出す、ぼんやりとした中高年になる、ということです。そうした前頭葉の委縮や機能低下を防ぐには、以下のような「脳にいい習慣」を実践すべきだと本書では提唱しています。
1.セロトニン不足を防ぐために肉を食べる
2.世の中にはいろんな価値観がある、つまりグレーゾーンを認める
3.男性更年期対策、すなわちテストステロンの不足に注意する
4.年を取るほど自分の好奇心に正直になる
5.極論や反対意見を排除しない
6.「結果が読めない」趣味を持つ
7.人間関係は前頭葉を刺激する最高のスパイス
8.失敗するかも知れないような試行をする
創造性、ひらめき、問題発見力、感情のコントロール、・・・・。高度な知的活動を司る脳の前頭葉は、最も遅く成熟し、最も早く衰える器官です。
本書は、老年精神医学の知見をもとに、前頭葉の機能低下が「思考の老化」をもたらすことを分かりやすく解説し、思考の若々しさをいかに保つかを提唱した書です。
50代の定年前起業を目指す方々には必読の一冊として推薦します。
では、今日もハッピーな1日を!