安保徹氏は東北大学医学部を卒業した医学博士で、免疫学の第一人者だ。著者は、免疫システムに関する数多くの本を書いており、そのどれもが論旨が明快だ。
すべて医学的な裏付けをもって書かれているので説得力がある。本書も著者の代表的な主張が展開されているものだ。病気はすべて、交感神経と副交感神経のバランスの崩れ、すなわち自律神経の乱れから生じる。
人間には自律神経の働きが大切であり、連動して動くリンパ球・顆粒球が免疫システムを司る。病の原因はすべて肉体的・精神的なストレスにより交感神経と副交感神経のバランスが崩れて交感神経優位へと傾き、それが白血球のバランスを崩して免疫力を低下させることにある。
このメカニズムが理解できれば、病を防ぐ手立てはあるし、現代医学の治療が効果を発揮しない理由もわかってくる。とくに近年急増しているガン、アレルギー疾患や膠原病などは、現代医学では治療が難しく、免疫療法が効くとされる。
安保博士の免疫学理論は、様々な臨床医療分野に応用が可能であり、もっと実践で活用されないのかと思う。あまりにシンプルな法則であり、原理であるためか、全面的に賛同して治療に取り入れる向きは少ない。
やはり医者は自説に固執するプライドがあるためだろう。ただ、我々のような医学のシロウトは、安保氏のシンプルな考え方が役に立つ。とにかくストレスを持たず、生活リズムの中で、自律神経の働きに気を配ればよい。
緊張感をもたらす交感神経と、リラックスや休息をもたらす副交感神経のバランスを毎日の生活リズムの中で取っていけば、免疫力を高い状態に保持できる。病気になりにくいという状況だ。
バランスを崩すのは心身のストレスだから、なるべくそれを感じないような環境に身を置くことが大切だ。一番は、物事に対する考え方を意識してコントロールすることだろう。
私も本書をはじめ安保氏の著書を読むたびに、免疫システムを正常に保つ考え方というものがあることがわかった。明るく前向きな人、生活の中に笑いが溢れている人は免疫力が強い。
健康管理に関心の高い人や病気に立ち向かっている人に、ぜひ一読を薦めたい本だ。