書評ブログ

大橋巨泉『巨泉の遺言撤回』(講談社)

大橋巨泉は、私が人生の師匠としている早稲田の大先輩だ。太陽が降り注ぐ暖かい場所を求めて季節ごとに住む場所を変える「ひまわり生活」というライフスタイルは私の憧れであり目標だ。

 

本書は、1995年に胃がんの手術をして以来、8年半ぶりに中咽頭がんが見つかり、2013年11月21日にリンパ節のがん摘出手術をした後、12月10日から2014年2月3日まで計35回の放射線の照射治療を受けた巨泉氏の闘病記だ。

 

手術よりも、とにかく放射線治療の副作用と後遺症が辛く、大変だったようだ。味覚を失い、口内炎の痛みや固形物を飲み込むことができない辛さは想像を絶する。

 

体重は72キロから56キロへ16キロも減少し、体力や筋力が衰えた、という。放射線治療の終了から3ヶ月で、やっと味覚が戻り始めたが、体重や体力の回復はなかなか進まない。

 

巨泉氏は、同様のがんと闘い、治療を受けて努力する人に少しでもためになればと本書の執筆を決めた。構成は以下の通りだ。

 

1.2度目のがん発見
2.「見えざる敵」 治療の副作用が襲ってきた
3.「私を人殺しにしないで」
4.80歳、闘病したらもっと生きたくなった
5.2度がんになってわかったこと
6.これからの人生は5年毎に生きる

 

人間、いつかは死ぬし、これほど確実なことはない。人生は有限なのだ。だから生きている間の譲れない線、生きる上での考え方、信条や人生の優先順位は決めておくべきだ、というのが巨泉氏の主張だ。

 

巨泉氏の信条は以下の4つで、私も全く同感で同じように考えて生きている。

 

1.前向きに生きる
2.生活の質(QOL)を大切にする
3.人生は、1に健康、2にパートナー、3に趣味、4に財政
4.転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け
5.You Can’t have everything (すべてを取ろうとしてはいけない)

 

そして「今回の人生では〇〇しない」ということで、優先順位を決めて欲張らない。例えば、西洋画はやるが日本画はやらない。競馬はやったが競輪はやらない。ゴルフはやるがテニスはやらない。将棋はやるが囲碁はやらない。

 

1業種1種目がいいと巨泉氏は言う。確かに、You Can’t have everything なのだ。80歳になった大橋巨泉氏は、やはり私の人生の前を行く、かけがえのない師であり、メンターだ。

 

これからも金婚式(2019年8月)に向けて、ますます元気に活躍を期待したい。また、多くの示唆に富む本書を、皆さんに推薦したい。