大橋巨泉氏は、私が人生の師と仰ぐ、「後半生」 の達人だ。TVタレントや司会者として、数々の人気番組を企画して一世を風靡した。「クイズダービー」や「世界まるごとハウマッチ」など、視聴率は驚異的な数字を叩き出した。TV界では伝説の司会者だ。
本書は、巨泉氏の生き方を書いた集大成とも言える書だ。56歳でセミリタイアして23年間の軌跡を描くと同時に、80歳を目前にして、人生80年時代の人生設計、後半生の「第二の人生」について述べている。
私は、巨泉氏からふた回り、24年間遅れてついて行っている早稲田の後輩でもある。私が手本として真似ている巨泉氏の 「人生の選択」が本書に、以下のように書かれている。
巨泉氏のセミリタイア生活は23年間、大きな変化はなく、以下の「ひまわり生活」だ。暖かい場所を求めて季節ごとに移り住むライフスタイルだ。
1.4月~5月 : 日本 (千葉県大網)
2.6月~9月 : カナダ (バンクーバー)
3.9月~10月: 日本 (千葉県大網)
4.11月 : オーストラリア (ゴールドコースト)
5.12月~3月: ニュージーランド (オークランド)
巨泉氏は、親譲りの実存主義者で、「人生はデスベッド(死の床)で決まる」という考え方だ。前世を信じない、後世もいらない、現世を楽しく生きてお迎えが来たら、はいさよなら、である。
巨泉氏は「第二の人生」の成功条件として、優先順位を以下の通りとしている。
1.健康
2.パートナー
3.財政基盤
4.趣味
以前は3と4が逆で、3番目が趣味、4番目が財政だった。ただ、バブル崩壊やリーマンショック以降のデフレと厳しい経済状況により、財政が3番目になったという。
また、夫婦ふたりの夢のリタイア条件として、①自分名義の家、②100万ドルのキャッシュ、③長期的な投資 (ビジネス) の3つが揃えば万全、としているが、普通の人には難しいだろう。
いずれにしても、現役である30~40歳代から、後半生の準備をしておくべきだ。20年先、30年先にプラスになる副業や趣味を続けて準備することだ。好きなことやコレクションがいい。
最後に、巨泉氏が勧める、後半生の「道標」(みちしるべ)を紹介したい。
1.You can’t have everything. (すべてを得ようとしてはいけない。)
2.転ぶな、風邪ひくな、義理を欠け。 (by 岸信介元首相)
3.ロイド・シェアラー ” A GUIDE TO A HAPPY LIFE ” (ホノルル・アドバタイザー誌 1989年12月31日号トップ記事)
①誰もこの世を生きて通り抜けることはできない、正しい価値観を持とう
②健康なくして幸福は不可能だ
③いつも明るく、人の役に立つ人間であれ (人々は同じように報いてくれるものだ)
④怒りっぽい人や揉め事の好きな人を避けよ
⑤熱狂的信者も避けよ、彼らはユーモアを解さない
⑥自分で喋るより人の言うことを聞くようにしよう
⑦人に助言を与えることにも用心深くしよう
⑧若い人に優しく、年寄りや困った人に同情的で、弱者や道を誤った人には寛容であれ
⑨成功と金を同等に考えてはいけない
すべてのビジネスパーソンに、「人生いかに生きるべきか」の示唆を与えてくれる書として、ぜひ一読を薦めたい。