書評ブログ

園善博『本当に考える力がつく多読術』(三笠書房)

昨日に続き、園善博氏の多読に関する本を紹介したい。本書は、11月30日に紹介した『読めば読むほど頭がよくなる読書術』(知的生きかた文庫)の元になった書だ。

 

構成は、文庫本とほぼ同じだが、最後の部分が少し詳しくなっていて、以下の6部から成っている。

 

1.読めば読むほど脳が働く多読術
2.頭のいい人が実践している 「多読のコツ」
3.本を速く、効果的に読む方法
4.記憶術 ー 本と対話しながら読む!
5.「本当に考える力をつける」 批判的読書法
6.毎日が 「いいことづくめ」 になる多読生活

 

まず著者の園氏は、冒頭で次の5つの読書についての信念を述べている。私も同感の内容だ。

 

1.人生の成否は読書で決まる、情報が増えるだけでなく 「考える力」 がつく
2.自分の頭で考え、判断するための軸を作るには、読書をするしかない
3.「考える力」 は、「自分の生き方を決める力」 だ
4.本を読むと、「いろんな考え方の人がいるのだ」 と多様性を学べる
5.世の中は単純ではない、だから本が必要

 

次に園氏は、多読法の具体的な進め方を紹介している。まず多読法の基本は、全体像をつかんでから、細かい部分にフォーカスする、ということだ。

 

また、キーワードを探しながら、「分けて読む」すなわち、パラパラ読みなどを上手く取り入れて読むことが大切だ。また、短期記憶を長期記憶に転換させるために6時間の睡眠が必要だ、としている。

 

脳は、眠っている間に情報を整理整頓して、短期記憶を司る海馬から、長期記憶を担当する大脳新皮質に移されることになる。

 

また記憶には、①情報を覚える、②情報を保持する、③情報を思い出す、という3つの要素がある。とくに、思い出すというプロセスに移行できなければ、活きた知識として活用することは難しい。

 

そのためには認知心理学でいう「精緻化」が効果的だ、という。「精緻化」とは、関連づけて覚えることで、そのことによって長期記憶に変わる。

 

本書では、多読に必要な能力として、次の3つを鍛えるとよい、と説明している。

 

1.想起力
2.集中力
3.予測力

 

想起力は思い出す力で、集中力はダラダラ読むのではなく時間を区切って読むこと、そして予測力は「言葉を体制化する」ことで身につく。体制化とは、グループ分けすることだ。

 

本書の巻末には、仕事力を飛躍的に高める本として、推薦書が記されている。昨日紹介した『本がどんどん読める本』 (講談社+α文庫)の巻末に掲載されていた書籍と併せて、以下に記しておきたい。いずれ、このブログで採り上げて書評を紹介したい。

 

1.秋田喜代美 『読む心・書く心 ー 文章の心理学入門』  (北大路書房)
2.西林克彦 『わかったつもり 読解力がつかない本当の原因』 (光文社新書)
3.コリン・ローズ 『コリン・ローズの加速学習法実践テキスト』 (ダイヤモンド社)
4.立花隆 『「知」のソフトウェア』 (講談社現代新書)
5.斉藤孝 『「できる人は」はどこがちがうのか』 (ちくま新書)

 

6.M.J.アドラー 『本を読む本』 (講談社学術文庫)
7.池谷裕二 『だれでも天才になれる脳の仕組みと科学的勉強法』 (ライオン社)
8.A.M.クラズナー 『クラズナー博士のあなたにもできるヒプノセラピー』 (ヴォイス)
9.トニー・プザン 『頭がよくなる本』 (東京図書)
10.麻柄啓一 『じょうずな勉強法 ー こうすれば好きになる』 (北大路書房)

 

11.岡本浩一 『上達の法則 ー 効率のよい努力を科学する』 (PHP新書)
12.加藤昌治 『考具』 (TBSブリタニカ)
13.川喜田二郎 『発想法』 (中央公論社)
14.島宗理 『パフォーマンス・マネジメント』 (米田出版)
15.J.L.マッガウ 『記憶と情動の脳科学』 (講談社)

 

読書によって、自分の生き方を決め、人生を豊かにしたい全ての人々に本書を心から推薦したい。